不器用な。


「別れよう」

そう言ってきたのは今から30分前のこと。
明日が3ヶ月の記念日だと嬉しそうにしていた彼女には悪いが、もう付き合えないと思った故に別れを切り出した。

大体のカップルは3ヶ月目が倦怠期だと言うがそうなのかもしれない。
きっと俺が別れを切り出した理由は倦怠期故だ。
時間が合えばいつも会うことにしていたし
苦手だったメールも頑張って送った
だけれども、無性に会いたくて寂しい夜が会ったのも事実だ。
その度に会いたい、とメールを作成しては消しを繰り返していた。
何回目かを繰り返した時にはもう真夜中を過ぎていて諦めて寝た夜もなんどもある。

取り引き先の彼女の会社に行った時も彼女がほかの男と笑顔で話しているのを見てよく分からない感情にとりつかれた事もある。

もう面倒なのだ。こんな訳の分からぬ感情に振り回されるのも。彼女のことを考えて空振るのも。彼女のことを独占してしまいたいという気持ちも。いい加減に疲れたのだ。

別れを切り出した時彼女の目からは涙がこぼれていた
何回も嫌だと言われた
何回も抱きしめて涙を拭ってやりたいと思った。
でもそう思うのはもう間違いなのだ。
彼女のことを突き放したのは俺自身なのだから。

彼女は今何をしているのだろうか
まだ、泣いているのだろうか
最後に家まで送ると申し出たとき目も合わせずに断られた故にちゃんと家にたどり着いているかもわからない。
本人は無自覚だが学生の頃からモテていた為今もしかしたら知らない男に話しかけられているかもしれない
だがもう俺には関係のない事だ。
だけれども何故俺は外に出る支度をしているのだろう
車のキーを持ってマンションを飛び出した
俺には関係のない事なのに。
別れてもなお、気になるのは

不器用な。

(きっと、まだあいつの事が好きだから)