「スゲー人だな」

 今日はギルドを抜け出してリオンと二人で城下町を歩いている。
 この間作ってやったプリンのお礼に、一流パティシエのお菓子試食会のチケットを貰ったので、さっそくやって来たが、人が多い。入口から長蛇の列ができている。

「まあな…それより」

 リオンが低い声で答える。俺が何?と聞くと、顔を真っ赤にして吐き捨てるように言った。

「どうして僕が女装なんかしなくちゃいけないんだ…!」

 俺はまたか…と思いながら溜め息をついた。先程から彼は自分の姿に文句ばかり言う。だから俺ももう何度目かわからない理由を諭すように言う。

「なんでって…このチケット男女ペアだから」
「だからって、なんで僕がこんな格好を…っ!」

 今、リオンはルーティの服を着ている。勿論ルーティに話をしてから借りている。リオンはとても嫌がったが、ルーティは楽しそうにリオンの服へ着替え、膨れっ面のリオンに少しだけ化粧もしてやっていた。

「いいんじゃね?結構似合ってるし」

 俺が茶化すように言うと、リオンは下から俺を睨んできた。

「男がこんな服似合ってるなんて言われても嬉しくない」
「ほらほら、そんな顔すんな。これから美味いもん食うんだから」

 いつまでも拗ねるリオンへ手を伸ばし、エスコートしようとすると、リオンは俺の手を払い、階段を上っていく。

「あんまり早く歩くと転けるぞー」
「お前と一緒にするなっ…っ!」

 リオンがバランスを崩したので、俺は咄嗟に手を伸ばし自分より小さなリオンの体を抱き締めた。
 同じ男とは思えないほど白く、普段は隠されている腕や脚、腰がとても妖艶に見えた。

「…いつまでそうしてるんだ」
「え?ああ、悪い」

 俺は煩悩を振り払いながら、腕の力を緩めた。リオンはすぐに俺から距離を取る。そのまままたスタスタ歩き出すので、俺はちょっと早歩きしてリオンの前に行った。

「エスコートしますよ。お嬢さん」

 その後リオンに晶術でぼこぼこにされたのは言うまでもない。






かっこいいはずのユーリが酷いことに。
文才が欲しい。

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