僕は大きな水の箱に入っている本で読んだことがある魔法の絨毯の様に優雅に泳ぐ魚をひたすら目で追う。
花子なんかに僕の事を叱るなんて100億年早いよ。でも、ちょっとだけ嬉しかった…なんて思ってない!思うわけがないよ!
少し火照る顔に気づいた自分は思わず首を振る。首を振って僕は或る事に気付く。さっきまで隣で騒がしくしていた花子の姿がなかった。

「え…」

どんなに周りを見渡しても花子の姿はない。周りには人集りで埋め尽くされてて探しても見つかりそうにない。

「……花子…?」

本当に置いてかれた?それしか想像出来なかった。…そして、この焦りはなんだろう?
帰る家が場所がなくなったから?ご飯を食べさせてくれる場所がなくなるから?…違う。そんなわけがない。花子は僕にとってどうでもいい存在だし、利用価値があったから傍にいただけで…花子がいなくなる事に焦ってるわけじゃない。そんなわけが、ないよ。

「花子ー!!!!」

そんなわけがないのに、どうでもいい存在な筈なのに、僕はどうして叫んでいるんだろう?僕はどうして泣いてるんだろう?…別に置いてかれもいい筈なのに。

「どこなんだよぉー!…ック……ばかおんなぁー!」

僕はどうしてこんなに必死なんだろう?周りの目を気にしないで叫び続ける様、きっと滑稽に写ってるだろうね。

「ばか…おんな…ぁ……花子…」
「ちょ、どうしたの!?行き成り叫んでから!」
「…花子…?」

声のする方を見ればアイスを二つ持ってきょとんとした顔で僕を見つめる阿呆面が立っていた。
その時僕の心がホッと安堵し安心していることに気づかない振りをした。
 


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