「頬痛い」
「自業自得だ」

リドルは関心が無さそうに呟く。今日何度目の頬抓りの刑だろうか。そろそろ千切れるかもしれない。自重してない私も悪いが手加減しないリドルも悪いと思う。
リドルはピカチュウの着ぐるみをそそくさと脱ぎ捨てては「これは絶対買わない」という視線で私を睨む。渋々ピカチュウと元ある場所に戻した。勿論、その後リドルに気付かれないように買ったけどね。
私たちはぶらぶらとデパート内を歩く。ふと目に付いた看板を見てある事を思いついた。

「んー水族館行ってみるか」
「すいぞくかん…?」

あの時代には水族館がないのか、それとも行ったことがないのか、リドルはクエスチョンマークを浮かべる。

「見てからのお楽しみー」
「…なんか、ムカつく」

少し意地悪な笑みを浮かべながら言う私にリドルはムスッとしながらも、初めての水族館に頬を染めている。多分本人は気付いてないのだろう。言ったらそっぽ向くから内緒にしておこう。





「す、すごい!」

リドルは、これでもかって位に頬を紅潮させ、瞳を輝かせる。初めての水族館、初めての綺麗な魚に驚きながらも興味を惹かれてるようだ。

「綺麗な魚がいっぱいるね」
「うんっ」

いつもの大人びたリドルはここに居らず、本当に普通にいる子供のようにはしゃいでいる。うん、こういう子供らしい一面を見るとあの恐ろしい魔法使い・ヴォルデモートとは思えないね。
否、あのヴォルデモートは幼少期に人と関わる事信じる事愛する事が出来なかった人間だ。今、こうやって私と接することでリドルは何か変わってきているのだろうか。…何日しか経ってないからなんとも言えないけどね、うん。

「…そんな訳ないか」
「花子!この魚可愛いよ!」
「………その深海魚をどの角度を見たら可愛く見えるんだよ、リドル」

ちょっとズレてる子に育つかもしれないか、この子は。
何も考えずに家に居させてるけど、もしリドルがこのままこの世界に居続けたらどうしよう。小説の物語はどうなるのだろうか。否、まずリドルの教育をどうしよう。やはり私が保護者になるのかな?…両親になんて説明をすればいいのか。外人の男とやって子供出来ちゃったー。みたいな?いや、これじゃ年齢的な意味も込めて釣り合わない。私が12、3歳で生んだことになるしね。
まず、リドルは普通の子じゃない。魔法を使えるのだ。その魔法を誰が教えるというのだ。あれは小説の話であって…探せばあるのかな、ホグワーツみたいな魔法学校。あったとしても探すのに苦労しそうだ。
あー考えれば考える程すっごい面倒なことに巻き込まれてることに気が付く。呑気に水族館来てる場合じゃないね。

「花子!これ、花子似てると思う!」
「ジュゴンがか!?私ジュゴンに似てるのか!?」
「鼻の下伸ばしてるところとか」
「そう言われると否定できません、すみません」
「っぷ」

私の発言がそんなにおかしかったのか、リドルは無邪気に笑う。あー何その可愛い笑顔、嫌なこと全部忘れちゃったじゃないか。親の言う子供の笑顔は癒しっていうのがよくわかるね。うん!これからの事はどうにかなるだろ!そう信じることにしよう!
今、この無邪気な笑顔を守りたい、見てたい。そういう気持ちだ。

「リドルは本当に可愛いなー」
「君には学習能力がないの?抱きついたらどうなるかくらいそろそろ覚えたら」

案の定私の頬引き千切れる勢いの痛みが走ったのであった。

 


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