どうも皆さんこんにちは。只今絶賛さっき知り合った銀髪くんこと仁王くんに抱きしめられております。決して疾しい事はしていません。これは私の沙織ちゃんルート完全制覇の為の試練なのです。
あまりに本格的に成りきるもんだからテンションが上がっております。決して仁王くんに抱きしめられてることにテンションは上がっていません。むしろ、気持ち悪いと思ってしまいますけど、仁王くんに言ったらまた怒られちゃいそうなので黙っています。
これも沙織ちゃんの為!私は黙って抱きしめられます。仁王くんがさっき怖い顔で叱ったから大人しく静かにしています。怒ると標準語になるんだね、怖いね、仁王くん。実は方言作ってるだけなので、驚きの事実だよ。
というか、5限目サボって屋上で抱き合ってるところ見られたらいろいろやばいよね、なんかテンション上がるね!相手が仁王くんなのが残念だけど!守くんがよかったな!
「さっきから失礼なこと考えとるじゃろ?」
「そんな事考えてません、さっさと説明してください、暑いんで」
だから、仁王くん鋭いって。読心術使えるの!?いや、仁王くんに限ってそれはない。仁王くんチャラいもん。
もう少しで初夏になるこの季節に屋上でずっと抱きしめられると暑いんですけどちょっとした拷問なんですけど。早く説明しておくんなまひょ。
皮肉を言ってやれば仁王くんのため息が聞こえる。私がため息だよ。暑いんだよ。汗かきなんだよ。
「そういう口の利き方する女ほど…虐めがいがあるんじゃがね…」
「え」
「……今日は、俺がお前さんを襲うんじゃ…」
仁王くんはそれはもう色っぽく且つ妖しく微笑む。
と思いきや、抱きしめる力が一層強くなり、見つめ合う私たちの顔は少しずつ近づく。
「何を…やってるの……?」
「キス、しようと思っとるんじゃ」
「仁王く…」
「黙りんしゃい」
私の言葉制すると、顔は更に近づき、唇と唇との間が数センチになる、そして…―――
「なんでキャラに成りきってないのっ?!」
「ぐぇっ!?」
近づく仁王くんの顔を鷲掴みにし、後ろの方に押した。それはもう力強く押しましたとも。
「んもう!ちゃんとキャラに成りきらないと!何、そのまんま、仁王くんのよくわかんない方言が出てんのよ!」
「ぇ、えぇ…」
ほんと、なんなのよ!自分から、私にキャラになりきれって言ったのに、自分はしないって!見た目通りチャラそうな人だったのね!全く!
「ま、いいや。とりあいず、これにしてみるわ」
仁王くんにはもう関心はなく、DSにまた向き合う。
仕方がない、同志かもしれない仁王くんの言葉を信じることにしてみた。私は"強引に襲う"をタッチペンでタッチし選択した。
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