ヨッシーとクッパ


スカイブルーのグラデーションの空に、絵の具の白色を塗ったような雲。それは奥にいくほどだんだんと細くなっていく。
ぼんやりとその雲を眺めていたヨッシーは、大きな欠伸を一つし、翠色の芝生の上に倒れ込んだ。

目を閉じて、深く深呼吸した。
立派な丸い鼻に蝶が留まり、小さく羽ばたいている。
それを見て微笑みながら…彼は意識を手放した。


つもりだったけれど。

ぽつり。

冷たい雫が一つ、彼の鼻に落ちる。
上半身を起こし、空を見ると、低くたれこめた暗灰色の雨雲が、スカイブルーを覆い尽くしていた。

はぁとため息をつく。
数分前はあんなにいい天気だったのに…
これじゃあおちおち昼寝もしてられない。

そんなことを考える間にも、バケツをひっくり返したような土砂降りの雨は容赦なく体を襲う。

とにかく雨宿りをしようと、ヨッシーは走り出した。
蝶はもうどこかに飛び去ってしまった。


**
そしてたどり着いたのは大きな木。
とりあえず雨は凌げそうだ。

ああ、今日はツイてない。
そう思い、木に寄り掛かる。

すると、見覚えのある姿が見え、声を掛ける。
刺だらけの甲羅、いつも立派に立っている赤毛は水で重くなり張り付いているが、ちゃんと威厳のある顔つきだ。
大魔王クッパはヨッシーの呼びかけに振り向き、ようやくそこに彼と雨宿りに適した木があることに気がついたらしい。

「久しぶりですね。クッパ」

「…そうだな」

ヨッシーはクッパが幼少期からの知り合いだ。
あの頃も今も敵同士。
だが二人は仲が悪いというわけでもない。
ヨッシーはマリオの味方。クッパはマリオの敵。ただそれだけの理由で、彼らは敵対している。

「雨、止みそうにありませんねぇ〜…」

「…全くだ」

続かない会話。
ヨッシーは必死に言葉を考え――どうやら吹っ切れたようだ。

「…僕の家、ここから近いんです。また濡れますけど、行きませんか?」

「どうせもうとっくに濡れたし、関係ないのだ」

「それじゃあ行きましょうか。」

そう言って、彼は土砂降りの中に躍り込む。クッパも後に続いた。

やがてヨッシーの家に着いたときには、全身びしょ濡れ。
予想通りの展開に、二人は苦笑した。

「今タオルを持ってきます」

「すまんな」

そうしてタオルで体を拭き、(甲羅のトゲでタオルが破けたが)二人は席に着く。

「寒いですねぇ…暖かいココアでも飲みますか?」

「ワガハイは甘い物は好かん。コーヒーがいいのだ」

「了解です〜。」

クッパの我が儘にも、彼は機敏に対応する。
慣れた手つきでコーヒーとココアを一つずつ用意するヨッシーを、クッパは少し興味深そうに見つめていた。




**
そして、太陽が沈む時間帯。
雨はいつの間にか止んでいて、真っ赤な夕焼けが燦燦と輝いていた。

「じゃあ、ワガハイはそろそろ帰るか」

子供達が心配するからな。と悪戯に笑うクッパに、ヨッシーは手を振り、

「また来てくださいね〜!」

と叫んだ。
その背中はだんだんと見えなくなって行く。

だが、ヨッシーにはちゃんと見えた。
クッパが手を振り返すのを。

彼は心底嬉しそうに微笑み、自分の家へスキップで入って行く。

虹が、彼らを迎えた。


END

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