リンクとロゼッタ


※フライング
捏造注意



不思議な人。第一印象はそれだった。もっと不思議なのは、他のメンバーもそう思っていることだ。
箒星の使者、とマスターは彼女を紹介した。マリオが宇宙を冒険した時に訪れた天文台の所持者で、星の子達の母親だと。

全てを達観しているかのような眼差しは正しく母親と呼ぶのに相応しいような気がした。彼女と共に屋敷に来た星の子――マリオがチコと呼んでいた――は、星という点かカービィと意気投合している。彼女はそれも慈しみの目で見つめていた。

「リンク!ロゼッタが絵本読んでくれるって!」

ピカチュウがとてとてと歩いてきて、嬉しそうに膝に乗った。気付くと周りに子供達が座っている。自分一人だけ大人だからか、少し居心地が悪い。
彼女の方をちらりとみると、目が合った。くすりと彼女は微笑んだ。
それがあまり表情を表に出さない彼女の、初めて見た笑顔だった。



「ロゼッタはよく笑うようになったよ」

マリオは言った。冒険していた頃よりも、ずっと表情が柔らかくなったと。

「子供達がいるからかなぁ」

彼女が住んでいる箒星には、チコしか居ないらしい。人間と接するのは、ずいぶんと久しぶりなのかもしれない。

――ゼルダに少し似ているかな、と最初は思った。口調と性格が似ていると。でも、それはすぐに違うと知る。漂わせている雰囲気が全く違うのだ。ふわふわとして掴み所がないと思ったら、ちゃんと芯がある。なんというか、彼女を言葉で表現するのは不可能なんじゃないかとさえ思う。

でもあえて言葉にするとしたらやっぱり、「母」だろうか。

「いずれにしろ、俺は母親を知らないからなあ」

どうしても、家族を知っているみんなと話がずれてしまう。トアル村のみんなは家族同然だが、血の繋がっている家族というものは知らないのだ。そういえば、マリオも両親は知らないと言っていた。

「…ここにいる人々は、みんな家族のようですね」

気がつくと、彼女は隣に座っていた。チコは子供達と遊びに行ったらしい。
そういえば、さっきの絵本の主人公は彼女に似ているような気がした。もしかしたら彼女自身なのかもしれないけど、それを確かめたら彼女はきっと、ここを去ってしまうだろう。

「血も繋がっていない、でも一緒にご飯を食べて、一緒に寝て、相手の事をよく知り、固い絆で結ばれる――」

彼女はそこまで言って、子供達が走っていった方角を見て目を細めた。
――彼女はきっと、ここにいる誰よりも家族というものを知っている。

「…ロゼッタさんはここに来て、よかったと思っていますか?」

他にも色々聞きたいことはあったけど、これだけは最初に聞いておきたかった。スマッシュブラザーズが家族なら、彼女も家族の一員なのだから。もしもあの絵本の主人公が彼女なら、その心を癒してあげられるのはきっと、家族だけだ。

「ええ。すごく…来てよかったと思っているわ。」

彼女はそう言って、幸せそうに微笑んだ。


20140111

prev next

[back]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -