情報合戦


(覚醒未プレイの時に書いたため色々おかしい)


「えっと…リンクさんはマスターソードをメインに色々な道具を使った戦法をとり、カービィさんは飲み込んだ相手の能力をコピーする…っと…」

ルフレはひとり、屋敷から声が聞こえなくなっても、ずっと書き物をしていた。分厚いノートには、綺麗な字で、スマッシュブラザーズの戦法がずらりと並んでいる。軍師の性と言ったところか、彼らと戦い、その特徴をまとめずにはいられなかったのだ。

特に歴戦の勇者は強い。新たなる戦士と比べて場数が桁違いなのだから当たり前だ。少し前にルフレも初代メンバーである十二人のひとり、キャプテン・ファルコンと手合わせしたが、手も足も出なかった。
ルフレは軍師である。魔法は強力だが、剣と素早さは他の戦士より劣る。常に三歩先を読み、考えながら戦うのが彼女のスタイルだ。だからこうして情報をまとめているのである。

迷いなくすらすらと動いていたペンが、不意に止まった。

(まだ戦っていない方もたくさんいる…これ以上は書けないか…)

ふうと息をつき、ノートを閉じようとしたとき、ルフレの視界に鮮やかな黒がちらついた。

(あれはたしか)

ルフレは驚いた。自分以外寝てしまったと思っていたのだから。起こしてしまったのだろうかと申し訳なさそうに顔をゆがめ、そっと声をかけた。

「ブラピ…さん?」

ランプのかすかな光の中で、いぶかしげに赤い瞳が細められた。光がなければ、夜に溶け込んでしまいそうなくらい、彼は黒い。夜闇に赤い目だけが際立って見えた。 ブラピっていうな。ぽつりと小さな声でつぶやいて、そっと視線をあげてたずねた。

「なんだ、まだ起きてたのか」

「それはこちらのセリフですよ」

ちらりとブラピはノートに目をやる。あっ、それは、と慌てるルフレを無視してペラペラと内容を目で追う。
それからふぅん、となにか面白そうなものを発見したように、顔を赤らめるルフレを見た。ノートを机に戻し、口を開く。

「…ピットはパルテナの神弓をメインに使う。あとは剛腕ダッシュアッパー、衛生ガーディアンもか。神弓はかなり曲がるから不意打ちされることもあるかもな。
女神は様々な奇跡を使う。杖や盾で攻撃もする厄介な相手だ。反射板で魔法も跳ね返されるからせいぜい気をつけるんだな」

きょとんとルフレは目を丸くする。今彼が言ったのは同じ世界から来た二人の情報だ。確かにノートには書いていなかったが、まさかブラピが教えてくれるとは夢にも思わなかった。
どうした、書き加えないのかと言われ、ルフレは慌てて筆をとる。

「…なぜ私にわざわざそんなことを教えてくれたんですか?」

「おかげで他の連中の情報が知れたからな、ちょっとしたきまぐれだ」

あなたが勝手に読んだんじゃないですか、と頬を膨らませる。それを鼻で笑ってあしらいながらブラピは言った。

「さっさと寝ないと明日乱闘で倒れるぞ、人間の女の体力なんてたかが知れてるんだ」

ぷいとそっけない態度を見てルフレはつい吹き出してしまった。

「ブラピさんって…意外と優しいんですね」

「ハァ!?そんなわけないだろ!」

もう帰る、と背を向けた彼に、ルフレはノートを抱えながらそっと首を傾げ尋ねた。白銀のツインテールがゆらりと揺れる。

「あなた自身の情報は教えてくれないんですか?」

ブラピは足を止め、バカにしたように笑った。ひらりと黒い羽が舞う。

「敵にわざわざ情報を送るほどオレはバカじゃないんでね」

――敵。こうして一緒に生活しても、乱闘時にはそうなるのだ。いつもはこんなに平和なのに。実感するとなんだか可笑しくなって、手で口元を覆う。

「ふふっ、それもそうですね」

いつか彼と戦うのが楽しみだ。ルフレは心からそう思った。

20141123

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