砂糖菓子のような君(2/2)
びく、と背を張った彼女の髪に顔をすり寄せて、ジェイドはひとつ息を吸った。
「あれから、忘れられなくて……君の味」
吐息と共に零れ出た言葉を彼女が理解するより早く、頭を動かしたジェイドは唇で白い首筋をなぞる。
羽のように軽く肌をすべる彼の唇は、うなじ付近から前の方へと移動し、喉元で止まった。
「あのとき、いい声で鳴いてくれたよね」
「っ、あ……!」
唇を肌につけたまま喋られて、やわい刺激に身体が震える。
リリィは彼の腕の中から抜け出ようと身をよじったが、拘束が解ける気配はない。
「ジェイドく……はなして、っひぁ」
彼女が抗議の声を上げれば、喉笛の辺りをあたたかく濡れたものが往復した。
ぴちゃ、と音を立てるそれが彼の舌だということに気づいて、かっと身体が熱を帯びる。
そんなリリィの状態にはお構いなしに、ジェイドは彼女の喉に軽く歯を立てた。
「あぅ……!」
「あれ、体温上がった? 君ってわかりやすいね」
さらりと言われて、リリィは恥じらいでますます身体が熱くなった。
震える彼女の首を舐めたり食んだりしながら、ジェイドの片手はリリィの胸元をさ迷っている。
「ジェイドくん、具合悪いんじゃ……」
「うん。すごく喉が渇いてるんだ。だから、ね」
君の血を、ちょうだい。
ぶつり。
リリィが返事をする間もなく、ジェイドは彼女のなめらかな肌に、ゆっくりと牙を立てた。
首筋に痛みが走る。しかしそれはすぐに、甘い疼きへと変わっていく。
「あっ、あ……は、ぁ」
ずるずると血を啜る音を響かせ、ジェイドは彼女の血を吸った。
その間も片手はリリィの胸のふくらみを揉むようにして動き、彼女を追いつめていく。
リリィの鳴く声を耳にしながら、少しの間吸血行為を続けた彼は、おもむろに突き立てていた牙を抜いた。
「やぁん!」
肌から牙が抜けるとき、ぞくぞくとした快感が身体を駆け抜けて、軽く背が反る。
ジェイドは名残惜しそうに噛み痕に舌を這わせると、零れた血を舐めとって囁いた。
「美味しかった。君の血、甘くて口の中で溶けて、砂糖菓子みたい」
霞掛かった意識の中で、もう一度きゅんと抱きしめられて、リリィは重い瞼を閉じた。
唇をやわらかく食まれて、彼の舌が口内に入ってくる。
キスをされて絡められた舌からは、錆びた血の味がした。
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