ボツSS詰め
2015/11/01 20:38



 いつも私たちふたりで帰ってくると、私には皆お帰りと挨拶をしてくれるのに、隣にいる彼女に声をかけるひとはとても少ない。だからなのか、彼女は教団の門の前に立つといつも少しだけ体が強ばる。ほんとうに少しだけだから、彼女のこう言った癖に気付いたのは最近だ。隠しているつもりなのかは分からないけれど、もっと早く気付くべきだった、と、そう思う。なのに私は何か言葉をかけるべきか、いつもここで迷ってしまう。そしていつもなにか言えば良かったと後悔するのだ。
「行かないの?」
 彼女は私に声をかけた。彼女の体の強ばりはいつの間にかなくなっていた。「行こうか」。彼女はこくりと頷いた。

 ホームをとても大好きだと誰にでもそう罪悪感なく言えるようになりたいのだけど、おかえりって、皆の暖かさが、彼女にはあまり向けられないのが悲しかった。そう思うといつだって彼女は申し訳なさそうな顔をする。今日もそうだった。それから私の手を強く握って、ごめんね、と言った。あなたが悪いわけじゃない、とか、謝る必要なんてどこにもない、とか、そんな言葉はいくらだって出てくるのけれど、やっぱり私は彼女にそんな言葉をかけていいのか分からない。私は笑う。曖昧に。早く兄さんの元へ行こう。そうすれば、きっと私は、何か言うことができるはず。

「――死天使様がお帰りになられた」
 去り際に聞こえてしまった。死天使。彼女の幼く成長しない体躯をそう呼ぶ人たちがいる。
 彼女はただいじめられているわけでもなんでもなく――恐れられている、ただそれだけ。そしてそれが、全てだった。
 
fate ぐだ子とロマニ

 月光で青く染まった海を、彼女がひとりで駆けている。彼女が足を動かす度に水が跳ねる音が響いて、この青い世界に似つかわしい幻想的な情景が出来上がる。その様子を、ボクもまたひとりで眺めていた。美しく、寂しい光景だと思う。見る人が見れば、魅力されてしまうだろうな、とも。
「ねぇ、ロマニ」
 前を向いていた彼女がボクに声をかけるために、後ろを向いた――これだけのことが、なんだか示唆的に感じられて――自分に苦笑しつつ、なに、と返事をする。
「ちゃんと聞いてる? 寝てない?」
「酷いな君は。当たり前だよ」
「ロマニが寝ちゃったら、もう私に危機を教えてくれる人はいないんだからね」
「サーヴァントがいるじゃないか」
「いるけど、今はいないから」
 頭を抱えた。彼女はこういう言葉遊びをよくボクに投げかける。(彼女のそれは言葉遊び未満のものかもしれないが)ボクは文学に造詣はない上に興味もあまりないのだから、意図がすぐに分からないことも良くある。そういう性質だから彼女は芸術系のサーヴァントと気が合うと思うのだけど……彼女といつも一緒にいるのはセイバーやランサー等の武人系のサーヴァントが多い。なぜか。
 だからますます、彼女のことが分からなくなる。

オリジナル中二病SS
 私の最後の文化祭は今日で終わった。私は体調不良で行けなかった。良くあることだと思う。卒業アルバムの文化祭の項目(あるのかは知らない)にはきっと私の写真は乗らないだろうし、そしてクラスメートが私の不在を気にすることもなかっただろう。思い出に残らない――それは私の心を安心させた。もしかしたらこれは中二病と呼ばれるやつで、大人になってから思い出に残っていないことに悲しくなることもあるのかもしれない。それはそれ。その時にまた、考える。
 とにかく、私は彼女たちの思い出には残らない。あとは数ヶ月を過ごすのみで、私はクラスメートの皆から忘れられる。良いことだ。早く世界のみんなに忘れられて、死んでしまいたい――そんな欲求が、私にはある。
 いや、死んでしまいたいんじゃない。現実に塗れている私は、ただただ幻想的なふわふわした足元の覚束無い、何もない世界で生きていきたいだけなのだ。だから、死にたいと――根源的な生命へと戻りたい、というような願いを抱く。けれどそれができないから、現実との乖離が激しすぎて、だから益々疲れていく。




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