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遊星×ショタ
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 サテライトはいわゆるスラム街で、生まれたときからここにいるような人間でもない限り、こんな劣悪な環境で生活など出来ないと誰もが異口同音に嘆く場所だ。確かに治安も悪く法などあってないようなものだが、慣れればそれも悪くはない。慣れたというより、ここで生まれ育ちそれなりに生きてきた俺にとっては特に不便もなかったが、幼少期をシティで過ごしてきた十夜にとっては違うのだろう。下水の臭いと罵声の飛び交う薄暗く汚れた街……ここはいつまで経っても、そんな環境のもと危険の入り混じる無法地帯なのだろう。

 1人ではなるべく出歩かない少年は今日、ラリーとともにここへ来ていた。教育を施すべき機関もこの街にはないため子供たちは何をするでもなく、ただ闇に溢れる微かな光を求めて彷徨う。俺もその中の1人だ。ラリーが隠れ家に戻った今、十夜もまた、ただぼんやりと、俺の近くで座っている。
 サテライトの隅の、セキュリティすら近寄らないこの区域は特に常軌を逸した人間が集まっていた。強盗、恐喝、身売り、果ては殺人。サテライト育ちの人間にも手に負えない連中が最後に行き着く安息地が、ここだ。

「十夜、疲れていないか?」

 常に危険が隣り合わせているこの場所でジャンクパーツを漁る俺へと会いに来た十夜はうつ向けていた顔を上げた。幼い見目と少し抜けた雰囲気のせいでやたら柄の悪い連中に絡まれやすい彼にとって、ここは恐怖の塊でしかないだろう。スクラップとなって廃棄されている車のボンネットに腰を掛けた少年は手持ち無沙汰に足を揺らしていた。

「ううん、平気。遊星の用事が終わるまで待ってる」

 強張った顔をにっこりと笑顔の形に歪めそう言ったが、どうにも調子が悪そうに見えるのは俺の気のせいではなさそうだ。赤錆の浮く鉄板から足を下ろし少年のそばに寄る。冷たい鉄の上にいたため体が冷えてしまっているのかもしれない。不思議そうに俺を見つめる十夜の頬を手の甲でさすって、それから幼い額に口付けた。

「遊星?」

「帰ろう。じきに日が落ちる」

 闇が濃くなれば、遭わなくてよかった災難に遭うこともあるだろう。見なくて良かったものを見るかもしれない。十夜の細い指を握るとそれはすっかり冷え切って、やはり体温を維持できていないことを知った。

「……冷えている。我慢してたのか」

 握り返された手と一緒に彼の肩を抱いた。耳元でクスクスと笑いながら柔らかい髪が顔や首を撫でていく。肌寒さを感じる空気から十夜を庇うように抱き締めてやると「遊星があっためてくれるからいいよ」そう返した。
 これからしばらく、俺は寒がりな十夜の元を離れられそうにない。

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