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遊星×ショタ
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 遊星の手ってきれい。俺は床に座って、Dホイールと繋いだパソコンで何かしている遊星を見つめていた。いつもは茶色いグローブをしているけど今はそれは外していて、肩から指先までが露出してる。細くて長くて関節がちょっとごつごつしてるけど、俺は遊星の手、好き。

「どうした?」

 何をするわけでもなくぼんやり見てたからか、突然遊星が俺を見てそう聞いた。別にどうもしないよ、見てただけ。照れ臭くってえへへと笑うと遊星も少し微笑んで「そうか」またパソコンを操りはじめた。
 こういうとき、いいな、と思う。
 俺も遊星の手に撫でられたい。パソコンみたいにじっと見つめられながら頭を撫でられて、俺はきっとそれだけで幸せだ。

 短く切りそろえられた爪が時々キーに当たるとカツンと音を鳴らす。俺は鳴りやまないカチャカチャという音を聞きながら、膝を抱えて顔を伏せた。
 何だか今日は凄く眠い。遊星のそばならどこでも寝れる俺の意識がだんだん薄らいでいって、床に倒れる前に一瞬、あ、寝そう、なんて思ったのが最後の記憶だった。



 カチャカチャカチャ、コトン。
 カチャカチャ。カチッ。
 ふと気が付くとそんな音が鳴っていた。ああそうだ、これはきっと遊星が機械を弄ってる音だ。そういえば俺、遊星のことを見てたら寝ちゃったんだっけ。それにしてもカチャカチャカチャカチャ、いつもよりうるさい気がする。
 目を開いて視線を動かすと、俺のすぐ近くに鉄の塊がいくつも置いてあった。後ろから伸びた手が置いてある鉄の塊を掴んで、今度は近くにあったペンチを掴む。そしてまた、カチャカチャカチャ。

「……ん? ああ、十夜。起きていたのか。すまないな、やはりうるさかったか?」

 起きるべきか寝たふりを続けるべきか悩んでる俺に気付いた遊星が鉄の塊とペンチを置いてそう聞いた。ぽんぽん頭を撫でられ顔を覗き込まれ、あれ、と思う。ここは遊星のひざの上だ。自分がひざまくらで寝ているということに今気付いた。
 ビックリして体を起こそうとしたら肩と頭を撫でられて、そのままで構わないと遊星が呟く。遊星が静かにカッコよく言うもんだから、俺はとても恥ずかしい。
 でもこれはこれでいいやなんて思いながら大人しく遊星の太ももに頭を置くと、また遊星の手が俺の髪を撫でた。

「……遊星?」

「可愛くてな」

 目線をあげる。遊星は俺を見つめていた。なんか、すごく、どきどきする。

「寝ていたから。起こしたら悪いと思ったんだが……近くで見ていたくて」

 だが流石に真横で機械弄ってたらうるさかったよなと珍しく苦笑いする遊星に首を振ってみせた。
 遊星は優しい。俺の体に合わせて、首が痛まないように頭を乗せる場所を調整してくれてるのも知ってる。くるんと寝返りを打って遊星の体に顔を向けたら、遊星は少しだけ唇を開いて「暴れるな」と、吐息だけで俺をたしなめた。

「寒くはないか?」

「平気」

「どこか痛むところは」

「ないよ」

「そうか」

「遊星」

「ん?」

「大好き」

「……ああ」

 遊星が口の中で「俺もだ」と言ってるのも知ってる。俺の髪と頬を撫でる手は温かくて優しくてちょっとだけ鉄の匂いがするけど、それも含めて全部好きだ。目を閉じてまたうとうとしていたら子供を眠らせるように背中を撫でられて、俺はまた眠りについた。
 次に目が覚めたときにはきっと、堅くてボロいベッドの中で、遊星が俺のことを抱き締めていてくれるはず。

 そのときまで、今日は、おやすみ。

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