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TF(小波)
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「……なに見てんだよ」

 留学生。その肩書きだけでカッコいいのに揃いも揃ってイケメンばかりだなんて、これはなんていう少女漫画なんだ。特にあの爽やか&王子様系のあいつ。めちゃくちゃモテそうだ。
 すれ違い様に見ていたら、見過ぎたせいで、如何にも不快ですと言わんばかりの目で睨まれた。これがヨハン・アンデルセンとのファーストコンタクトである。



「なぁ小波、次の体育バスケットボールだろ? 一緒にやろうぜ!」

 果てしなく似合わない体操服に着替えたヨハンが俺の腕をそれはそれはきつく握り締めて誘う。こいつは顔こそ爽やか王子様系だが、実は筋肉が凄い。そりゃこの逞しい腕で力一杯握り締められれば痛いだろ、と思うものの、こいつは力任せに全力で、要するに十代と同じく一直線に愛を向けるものだから邪険にも扱えなかった。まぁヨハンは十代と違い多少計画性のある一直線なのだろうけど。

 しょうがないなーと相槌を打っていざ臨んだ体育は、鮎川先生の思惑によってやはりバレーボールへと変更されてしまった。1年の頃から思っていたが、鮎川先生はバレーが好きすぎる。

「それじゃあ、タッグパートナーとトスの練習から始めましょう」

 おっとり〜とした口調で開始が宣言されて、ヨハンに誘われるまでもなくタッグパートナーという名目で組まされた俺たちはボールを投げる。本来なら下手で緩やかに投げてやると相手はボールを返しやすいのだが、俺はちょっと意地悪してスパイクを決めてみた。ふわりと宙に上がったボールを手の平でバシンと叩くとボールは勢いよくヨハンへと飛んでいく。

「おっ、と!」

 予期していなかったヨハンは焦ったように目を見開いたが、何の無理もなく伸ばした腕でそれを打ち返す。手足も長くて運動も出来る。羨ましいことだ。俺の妬みをよそに、ヨハンはニッと笑って、自分の頭上に打ち上げたボールに顔を向けた。嫌な予感がする。



「やったなー小波! お返しだ!」

「ちょ、ヨハン待っ、」

「うりゃ!」

 バン、と音がした。ただでさえ力強いヨハンがお返しのために更に力を込めてボールを、殴った。当然プラスされた力の分だけ加速するそれは迷うことなく俺を狙って、避ければいいのに残念な条件反射で構えてしまった俺の腕を一瞬早くボールがかい潜り、腹にぶち当たる。もうほとんどパンチと変わらない衝撃がボディにがっつり入って一瞬息が止まる。なにこれ凶悪すぎる。でもボールは辛うじて抱き抱えているので、ドッヂボールならセーフだな。

「こら、小波くんにヨハンくん、バレーボールドッヂボール用じゃありませんよ」

 いや鮎川先生、これはレシーブ出来ないだろ、受けたら折れる。腕も心も。
 腹はズキズキ腕はヒリヒリした状態ですいませんと返した俺に駆け寄って来たヨハンは「あはは、力入っちまった!」なんて笑ってやがった。

「凄いなー小波! 絶対避けると思って十代狙ったのに、取るなんて思わなかったぜ!」

 十代を狙った……? お前まさか十代に今のボールを当てるつもりだったのか……?
 後ろで翔にアタックをかましている十代は気付いていない様子だったが、なるほど、俺は身を挺して友を救ったわけだ。

「やっぱ俺からの愛だから取ってくれたんだろ? だとしたら十代に当たらなくてラッキーだったよな!」

「ヨハン」

「ん? どうした?」

 俺は無言のままボールでヨハンの額を叩いてやる。彼は「いてて、どうしたんだ小波? ケガでもしたのか?」と心配しているようだったので何でもないと首を振った。もう二度と、アタックなんてするものか。

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