遊星×ショタ
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俺も十夜もよく絡まれる。俺は目付きの悪さや生意気な言動が祟ることが多いが、十夜はその小柄さが祟っていた。俺よりも2つ3つほど年下なだけだが、彼の発達は乏しく幼子のような低身長である。誰にでも優しいその性格がなおさら悲劇で、みんな十夜の可愛さを分かっていないとしか言いようがない。
そして今も例外なく、1人で部品を運ぶ十夜は若い男たちに絡まれていた。
「いってぇなテメェどこに目ぇつけて歩いてんだ!!」
「あ、え? あ、ご、ごめんなさい……?」
「謝って済むもんじゃねぇんだよ! テメェ不動んとこのガキだな! そろいもそろってクズどもが!!」
男は気持ち悪い薄ら笑いを浮かべて大声で十夜を罵っている。痛いなどと言うが、十夜がぶつかったわけでもないのにそうして怒鳴り散らすということは、俺を嫌っている連中の1人だろう。大方俺にデュエルで負けた憂さ晴らしのつもりかもしれないが、喧しい男の顔は全く記憶に残っていなかった。
中々戻らない十夜を心配して迎えに来たのだが、来てよかったと実感した。何も悪くないのに思わず謝ってしまう十夜に近付いて肩を抱く。少年が振り返ってぱっと顔を輝かせた。今日も可愛すぎる。
「不動テメェ……」
「……やろうか」
「あ?」
「デュエルで、叩きのめしてやろうか?」
顎を引いて下から睨み付けると男はぐっと口ごもった。苦々しく舌打ちするとさっさと背を向け壁を殴りながら消える。本当にデュエル、あるいはそれ以外で勝負してやってもよかったが、どうも向こうは嫌なようだった。ならば十夜に絡んで欲しくないものだ。
「ゆうせぇぇぇ……!」
「十夜、大丈夫か?」
少年が抱えていた段ボールを持ってやると、彼は目を潤ませながら俺に抱きついた。十夜は酷く喧嘩を嫌うからああいった揉め事は苦手だろうに、よく絡まれるから放っておけない。
恐かったよぉと半泣きになる姿も可愛くて仕方ないから、俺は肩に段ボールを乗せ空いた手で十夜の頭を撫でた。
「迎えに来てよかった」
「うぅ、待たせてごめん……」
「いや、いい」
こんな邪魔なものを持ってるわけにも行かないので、そのまま部品置場に運んでやった。十夜は俺が来たことがそんなに嬉しいのかしきりに遊星遊星と名前を呼んでふらふらとついてくる。
「ありがとう遊星!」
「ああ。行くぞ」
足早に工場を抜けて外へ出ると、十夜の手がするりと自然に俺の腕に抱きついてきた。甘えるようにぎゅっと力を込めてえへへと笑いかける姿も愛しい。年のわりに少し気が弱く頭もよくはないが、それでも十夜は人に愛される才能は溢れんばかりに輝いていた。
「遊星、遊星」
「なんだ?」
「好き」
「……ああ」
俺もだ、なんて言葉は恥ずかしくてとても言えないが、俺は足を止めて十夜の額にキスをした。身長差のせいで体をかがませなければいけないこの行為も、愛らしくて、好きだ。
ほわっと頬を赤らめて喜ぶ十夜の腕が首に回されたので俺は小さな体を抱き上げて、今度は唇へとキスを落とすのだった。
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