大蛇丸様と
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体を取り替えてからの大蛇丸様はとても調子がいいみたいで、前より頻繁に外に出るようになっていた。研究して、実験して、陽が沈むとカブトと一緒に姿を消す。きっと必要なモルモットを調達してるのだろう。僕はアジトに置き去りで、大蛇丸様の帰りを待って外で眠る。
頭が悪いと、力が弱いと、大蛇丸様の役に立つことすら出来ない。両方を備えたサスケと両方の欠如した僕が同じアジトに残されるこの瞬間が、たまらなく嫌いだった。期待の募る次の器と空気を共有するのが嫌で外に出た僕は、かれこれ数時間も岩陰に座り込んで膝に顔を埋めている。大蛇丸様にとって僕は無価値に等しい。そう思うと途端に胸の辺りがモヤモヤする。頭がよければ、力があれば、今すぐにでもサスケとカブトを嬲り殺しにしたい気分だ。
「お前、ここで何をしているの?」
ふと頭上から声を掛けられて僕は慌てて顔を上げた。まさか人が来るなんて思っていなくて、敵だったらマズイとか、サスケに連絡しなきゃとか、そんなことが頭の中に駆け巡る。
「あらあら……情けない顔」
それは大蛇丸様だった。しゃがみ込む僕の前で腰を屈め、髪を耳に掛けながら僕を見下ろしている。月光を受けた青白い手が僕の頬を撫ぜる。
「何を落ち込んでいるの? またサスケくんに虐められたのかしら?」
その言い方だと僕がいつも虐められているみたいでムッとしたが、僕は黙って首を振った。普段なら夜明けまで帰らないのに、今日の帰りは随分早いなと思う。何も言えずに大蛇丸様を見上げる僕の唇を大蛇丸様の親指がなぞって、それがゆっくりと口の中に入ってきた。
「んむ……?」
「待ち焦がれていたって顔をしているわ。お前の顔は正直ね」
親指がベロの上を滑って口の中を移動する。大蛇丸様の指は冷たくて、アイスでも舐めてるみたいだ。味のしない指にベロを絡ませてチュウッと吸うと、大蛇丸様はクスクスと笑った。ぎゅっと痛んでいた胸がじんわりあったかくなるような変な感じだ。僕は嬉しくて、夢中になってそれをしゃぶる。
「いいわ……相手をしてあげる。でもその前に、中に入りなさい。風邪を引くわよ」
ずる、と引き抜かれた親指を追って僕のベロが伸びる。唾液が岩に落ちて黒く汚し、僕は前を歩きアジトの中に戻っていく大蛇丸様を追った。
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130205