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サソリとデイダラ
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 人間の拾いものはするもんじゃないなと思ったのは最初だけだ。ひと月も共に過ごすと何となく情が湧いてきて、しかもそれが邪気のない少年なら尚更だった。尾獣集めの旅で子供を拾うなど、オイラは疎か、思慮深いサソリの旦那ですら予想だにしていなかったに違いない。
 寂れた茶屋でオイラ、木更、旦那と長椅子に三人並んで座りながら団子を頬張り、そんなことを思う。

「美味いか? うん?」

 隣に座る、オイラより五つ下の子供はもごもご口を動かしながら頷いた。動物みたいで可愛いと思った。言うなればこれはリスだ。小さい口一杯に団子を頬袋へ詰め込むような、そんな絵面だった。

「茶も飲め。喉に詰まるぞ」

 自分は一切飲み食いしないサソリの旦那が、茶の入った湯のみを木更に渡す。意外と子供には優しいんだなと知ったのは木更と生活するようになってからだ。
 高圧的な物言いは相変わらずだが、何かとよく面倒を見ている。バカとかアホとか罵りながら頬に付いた餡を拭ってやる姿は不思議という他に言葉が見当たらない。本体で出歩く今は外見年齢が木更と近いことも相俟って、そんな光景をパッと見れば兄弟のようで、端から見れば似ていない三兄弟だとでも思われているのかもしれない。

「何ジロジロ見てんだてめえは」

 表情の変わらない目がオイラを睨んだ。外見を裏切って平均年齢を上げてるのは旦那だと考えていたのがバレたのかと一瞬焦ったがそうではないようである。何でもねえよと返すと、サソリの旦那はまた木更に顔を向けた。中年男が何を思って木更を見つめているのか、十六も年下のオイラには想像もつかない。

「ここからは歩きになるからな。しっかり食って、体力付けとけよ、うん」

 はーい、と木更が返事をした。可愛いな……と絆される反面、子供の向こうでサソリの旦那の頬が緩むのを見逃さなかった。「邪魔になるからそんな汚ねえガキ拾うんじゃねえ」と吐き捨てたのはどこの誰だったのか。
 あんなナリをして子供は可愛いなどと思っているのかと思うと若干寒くもあったが、とりあえずオイラは黙ったまま団子を腹に収めた。

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130124