ペッティングが好きな夏油の話
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どうしてもって言うから服を着たままベッドに横たわって、どうしてもって言うから下着を脱いで足を開いて、どうしてもって言うから恥ずかしい気持ちを押し殺しされるがままにあそこを舐められてる。本当は念入りにお風呂にだって入りたいし、電気を消して大人っぽい雰囲気の中で裸で抱き合い愛し合いたい。それなのに私の彼は「する前にシャワー浴びたらもったいないでしょ」と、さも当然のように首を傾げるし、挙句の果てには電気を消したら見えないからと明かりをつけたまま行為に臨むから全然価値観が違うなと思う。傑は普段それほど多くを要求してこないのにエッチの時になるとああしてほしいこうしてほしいと色々リクエストしてくるから、何となく無下にするのが申し訳なくてつい言うことを聞いてしまうのが悪いというのは分かってる。でも私だって一応最初の頃は恥ずかしいとか嫌だとか、やんわり拒否はしたのだけれど、ことあるごとに求められ満ち足りた顔で「可愛いね」なんて言われるものだから、そのうちこれはこれで別にいいのかな、なんて思ってしまっていたりする。惚れた弱みというか押しに弱いというか。自分のチョロい性格をちょっとだけ恨む。狭い部屋に響くぺちょぺちょ、ぴちゃぴちゃという湿った音がやんだかと思うと、ふう、と小さく息を吐く音が聞こえた。
「蟻宮、考えごとしてるでしょ」
私の下半身に顔を埋めていた傑が突然そんなことを言い、少しだけ意識が明後日に向いていた私ははっとして視線を落とした。口の周りを私の体液でべたべたに濡らした恋人が様子を窺うようにこちらを見ている。ベッドの上で蹲る格好になっているはずなのに傑の体は全然小さく見えない辺り彼はやっぱり体格がいい。五条と並ぶとかなり柄悪いし。
「し、してない……」
「嘘。今目が泳いだよ」
「え、うそ」
「本当。こっちに集中しなよ。たまにしか出来ないんだから……それとも気持ちよくない?」
ううん、と首を横に振る。むしろずっとじんわり気持ちいいのが下半身に纏わりついててつらいくらいだ。膝丈のスカートを腰の辺りまでたくし上げ、肌を見せたいのか隠したいのか自分でも分からない中途半端な格好のまま固まっていた私はキュッと唇を噛んだ。
「だっ……て、恥ずかしい……シャワー浴びてないし……」
「知ってる。私がそう頼んだからね」
「今日、祓って来たから汗だってかいてるもん……」
「それも知ってる。でも私は蟻宮の汗の匂い好きだよ」
「バカ。それにさっき……お、おしっこだって、したから……」
「うん。ちょっとしょっぱい」
「バカ! 最低!」
「痛っ、蹴るなよ」
思わず反射的に足を上げ傑の肩を蹴ってしまった。痛いとか言いつつ全然痛そうな顔をしない傑は片手で私のふくらはぎを掴んでそのまま腕を伸ばす。掴まれた私の足は彼の腕のリーチ分だけ外側に押されて見えちゃいけないところを更に晒した。わざわざ味なんて言わなくてもいいじゃん変態。羞恥心と怒りで急激に体温が上昇して泣きそうだった。人にはあられもない姿を要求するくせに自分はきっちり制服を着込んだままの男が目を細め、いつもより少し楽しそうな胡散臭い笑顔で私を見下ろす。
「蟻宮はいつもそうやって暴れるけど、本当は嫌じゃないんだろ? 本当に嫌だったら私の頭に踵落としてるはずだし」
「傑のが体格いいんだからそんなの無理でしょ」
「でも蟻宮の方が乱暴だよ」
「それ、踵落としてほしいってこと?」
「まさか。好きって言ってほしいってことだよ」
ふふ、と傑が笑った。優しくて穏やかな声が耳に心地よくてその笑い声だけでストレスが和らいでしまうからずるい。ふくらはぎを掴む手とは逆の手が私の太ももの内側を撫でる。ごつごつした大きくてあったかい、少し汗ばんだ手の平の感触にぴくりと足が震えた。もしかしたら傑の言う通り、本気でムカついたら踵でも頭突きでもして徹底的にぶっ飛ばしてしまうのかもしれないけど、それをしないってことは私は傑に触られるのが好きなんだと思う。おしっこの味を告げられるのは別だけど。足に込めていた力を抜いて手の促す通り膝を外側へ倒す。恥ずかしい。恥ずかしいからスカート丈だって長いものを指定したのに、まさか人前で大股開かされるなんて思ってもみなかった。傑の顔がまた私の股間に吸い寄せられていく。舌が敏感なクリに当たって腰が跳ねた。ぺろ、ぺちゃ。また始まる。今度は意識がそっちに向いてるから素直に刺激に反応してしまう。
「あっ……き、もちい……」
小声で呟くと傑が笑う気配がする。自分だけ余裕綽々、みたいな感じむかつくけどそれを指摘するのも面倒だったし、さっきよりも気分が乗ってきたので水を差す気にはならない。温かくてぬるぬると滑った舌がクリの形を確かめるみたいにくるりくるりと周りを舐めて、しばらくすると皮のない下側から優しくゆっくり舐め上げる。腰が浮いちゃう。クリが熱い。あそこからじゅわ、と体液が滲む感覚がある。
「んっ……んっ……あっ……んんっ……」
傑の舌が動く度に声が漏れた。決して動きを早めるわけでもなく、かといってやめるわけでもなく、一定の緩やかな動きを保ったまま舌がクリだけを嬲り続ける。体に熱が蓄積して熱い。背中やお腹に汗をかき、それを吸った制服がじっとりと湿って気持ち悪い。額からこめかみを汗の玉が伝う感覚がくすぐったかった。ふう、ふう、と荒い呼吸をする度に胸が上下する。熱い、息苦しい、気持ちいい。感覚だけが私の体を包んで纏わりついて、深い沼に引きずり込まれているみたいだった。
「あっ……あ……イ、きそぉ……」
上擦った私の声はさかりのついた猫みたいに切なく掠れてる。私の申告を受けた傑の大きな舌が速度を変えないまま、それでもねっとりと下から舐める動きにシフトして、私がイキやすいように、私の好きな動きをしてくれる。舌のざらざらまで感じられるくらい私のそこは敏感になっていて、多分もう、あと数分も持ちそうにない。部屋中に満ちた汗と体液の饐えた匂いが私の鼻から脳を犯してる。両膝がシーツにつきそうなくらい足を開き、腰を浮かせて上下に揺らしてしまう。イキそう。ほんとうにイキそう。手を体の横に下ろしシーツをギュッと握りしめた。つま先に力がこもる。
「あっ、あっ、イっ、いく、いくっ……イクぅ……っ」
きゅう、とお尻に力が入る。傑の舌がゆっくりゆっくり、ぬるぬるを押し付けるみたいにクリを舐めたあとに唇を押し当てちゅうっと吸った。「ああっ、あ……っ、あー……っ」震える声が私の喉から漏れて、硬直している腰がガクガクと恥ずかしいくらい痙攣して、ぷしゅっと液体が噴き出した。筋肉が固まって力が抜けなくて呼吸もままならなくて、はっ、はっ、と犬みたいなみっともない声をあげながら余韻に浸る私の股間から口を離すことなく、傑はまたそこを舐め始める。「まっ……、しゅぐ、いま、イッ、れる……っ」焦点が合わなくて真っ直ぐ傑を見られないけど、くすぐったさとも痛みとも快感とも違う奇妙な感覚に追い立てられて私は手を伸ばした。傑の手が私の手に指を絡めて優しく握る。彼の手は汗でべちゃべちゃだ。涼しい顔して、全然余裕がありますみたいなフリをして、本当は汗が吹き出すくらい興奮してくれてるのかな。ふーっ、ふーっ、という声は私のものではなかったから、きっと顔を埋めてる傑のものだと思う。浮いていた腰が落ちて、舐め続ける舌から逃げようとするのに傑の腕が私の太ももを力一杯掴んでるからそれも出来ない。絶対傑のが乱暴じゃん。じゅるる、と啜る音に目の奥がチカチカした。おまんこから溢れ出す愛液がお尻の穴まで伝って、舌の蠢きに合わせて足がびくんと跳ねる。傑が緩慢な動きで顔を上げた。口周りは依然べたべたに濡れている。手の甲でそれを拭って鼻を啜る彼の頬には薄く汗の筋が見えた。普段顔色ひとつ変えない仮面を貼り付けたみたいな顔をしてるくせに、こういうときにはしっかり汗をかいて顔を赤くするなんてやっぱりずるい。
「蟻宮、ごめん、入れていいかな。もっと舐めたいんだけど……今日はちょっと限界かも」
「もう入れていいよぉ……奥、突いてほしい……」
「何それ、エロいね……ねえ、チンポ入れてって言ってよ」
「でた、変態……」
「変態だよ、男だからね。蟻宮の口からチンポって聞くと興奮するんだ」
なんで男子ってこういうの恥ずかしがらないんだろう。こっちは毎回恥ずかしいのに。恥ずかしいのを我慢して足を開いて、恥ずかしいのを我慢して恥ずかしい姿を見せてるのに、更に恥ずかしいことを言わせようだなんて本当にとんでもない。こう言えばチョロい蟻宮は私の言うことに従うだろう、という考えが見え見えの薄ら笑いを浮かべる男が憎らしい。
「……ゴム、つけて」
そう小声で言うと傑はうんと頷いて、自分の腹の辺りに片手を突っ込んでカチャカチャとベルトを外し、パンツと一緒にズボンごと下へと押し下げた。ぶるんと勢いよく飛び出すアレに嫌でも目がいく。いつどう見てもでっかい。先っぽも赤黒くて張ってて見るからにグロいのに、アレが私の中に収まるなんてとてもじゃないけど信じられないし、嘘でも「入れて」なんて言いたくないという気持ちにさせてくる。最初の頃は本気でビビって大騒ぎしたけれど、流石にもう慣れた、ような気がする。ベッドの上に無造作に放られた箱を引っ掴んだ傑の手がアルミの袋をひとつつまんで、ピリッと破くと中から現れた半透明なビニールみたいなゴムを取り出す。傑も最初はつけるの下手だったけど、器用な男だから二回目にはスムーズにつけてたっけ。先端にゴムを押し当てて指で押し下げ、なんやかんや調整してる様子を見てるうちに少しだけ私の頭にも冷静さが戻ってきてしまう。こういうのは熱でぶっ飛んでる方が理性とか羞恥心とかに邪魔されなくていいんだけど、こればっかりは仕方ない。
「萎えた?」
私の様子を察した傑がそう言った。私は首を横に振る。
「ふふ。また嘘。……キスしようか」
私の足の間で蹲っていた傑が膝立ちになってこちらに覆い被さると、視界はあっという間に黒い制服で一杯になった。肩幅があるから身長以上に大きく感じるのかもしれない。大きな口が横に引き伸ばされ笑みの形を浮かべ、それから私の唇に押し当てられる。自分の体液で濡れた唇は複雑な気持ちだったけど幾度か角度を変えて触れるとそんなことすらどうでもよくなった。唇が開き、隙間から舌が伸びる。私も口を開けてそれを受け入れた。熱くて柔らかい。何の味とは言わないけれど、少ししょっぱいような気もする。口の中を舌が泳いで、ちゅうっと小さな音を立てて私の舌を吸った。キス気持ちいい。お腹に熱を持った硬いものが擦れ、こっちとしてはそっちが気になって仕方ないので傑の袖を引く。
「傑……チンポ、入れて……」
「いいの? めちゃくちゃにしちゃうかもしれないけど」
「いいよ……傑のチンポで、奥、ぐりぐりしてほしいの……」
「あー……今のすっごく興奮した……」
「ピクピクしてる……」
「そりゃあ、するでしょ」
はあ、と大きく息を吐いて傑が目を伏せた。片手を股間に持っていきアレの根本から先端に向けて指を滑らせ、私のあそこに押し当てる。その感触ですら質量を感じさせて一瞬怯んでしまう。熱くて丸い熱の塊が入り口に触れて、ゆっくりと中に侵入してくる。ぬるぬるに濡れているので痛みは全くないけれど、久々に受け入れる異物の圧迫感がすごくて息が詰まる。先っぽがぬぽっと音を立てて入った。「んっ」気持ちいいところに擦れて思わず声が出た。でっかいから、絶対そこに当たる。抜くときはもっとエグい。傑が腰を押し付けるとにゅるるるる、と太い棒が体内を押し広げ深く深くへと進んでくる。あ、奥あたる……両足を大きく開いた。傑の下腹部と私のお尻とがぶつかってパンッと乾いた音が鳴る。先っぽの丸いところが奥にぶつかって、私の口から「あうっ」と声が漏れた。
「あー……すっごい……ゴム越しなのに気持ちいい……」
独り言みたいな感想を呟いた傑の手が私の腰を掴む。逃がす気のない強い力でウエストの少しくびれたところをしっかり掴んで、腰で押すみたいに動くと突き上げられた私の体が上へとずれていく。子宮、押し上げられるの気持ちいい。大きく広がった入り口が擦られる感覚と、アレの張り出した部分が中を引っかく感覚と、一番奥がコツコツと叩かれる感覚にまた呼吸が覚束なくなる。ぬち、ぬち、ぬちゅ、ぬちゅ。湿った音が徐々に粘着質な音に変化していく。「あっあっあっあっ」突かれる度に私は断続的な声をあげた。
「すぐっ、るっ……だめっ、そこっ、いやっ」
「そこ? そこってここ?」
上半身を倒し私の体の横に腕をついた傑が下半身を押し付け円を描くみたいにぐりぐりと腰を回す。それだめ、子宮が、入り口の気持ちいいところが圧迫されて、頭バカになりそう。咄嗟に傑の上着の裾を掴んだ。「やぁぁっいやあぁっ」媚びた声があがってる。多分これは私の声だ。傑の腰の動きが激しくなる。寮の簡素なベッドが傑の体重に揺らされてギシギシ激しい音を立てるのが生々しすぎる。短いストロークで何度も何度も出し入れして、私の弱いところを徹底的に突いてくる。苦しくて上を向くとむき出しになった首筋に傑の唇が吸い付いて、犬みたいにべろべろと舐め回した。気持ちいい。熱い。苦しい。イキそう。キュンキュンと込み上げる切ない快感に中がうねって、傑もはあはあと荒い呼吸を漏らしながら必死に腰を振っている。こんな、動物みたいなこと。冷静沈着で、クールで、頭のいい傑が、私の中にチンポを突っ込んで、私のことを舐め回して、一生懸命腰を振るだなんて、そんなの興奮するに決まってる。
「あっあーっいくっいく、また、またいくぅ……っ」
きゅうっと気持ちいい疼きが背筋を昇って再び体が硬直した。さっきのクリイキのときとは違う、もっと湿っていて、もっとぐちゃぐちゃにかき混ぜられた快感がチリチリと脳を焼いて、指一本たりとも動かせない。ブラの中で硬く立ち上がった乳首が擦れる感覚にすらゾクゾクする。心臓がドクンドクンと早鐘のように撃ち響いていた。傑の心臓もだ。口を開けて、短く息を吐き出しながら小刻みに腰を揺する傑の顎から汗がぽたぽたと垂れてくる。傑はイクときまで静かだ。中から脳までが痺れたみたいに熱を持ち、もう私は自分の体を自分の意思で動かせそうになかった。涙で視界が滲んでるし、短くて浅い呼吸しかしていないせいで頭もぼんやりしてる。大きく息を吐いた傑の顔が私の胸に落ちたかと思うと、しばらくすると肩を揺らしながら深呼吸をし始めた。
「……ごめん。体平気?」
平気なわけない。股関節は外れそうだし腰だって絶対痣になってる。いつもそうだけど掴む力強すぎ。一応女子なんだからもうちょっと加減してくれたっていいのに。しかも上に乗られると超重い。文句は口から出てこなくて、代わりに「あんま、平気じゃない……」と可愛くない言葉が出た。傑の笑い声が聞こえる。人のおっぱいの上で笑わないでほしい。
「蟻宮って、本当可愛いね」
「……傑、絶対変」
「変じゃないよ。蟻宮は可愛い。今度悟に聞いてみなよ」
「今日ブスって言われたもん」
「ええ? こんなに可愛いのに……悟は変な奴だな」
「それは言えてるかも」
他の一般的な女の子に比べたら乱暴で強くて闘争心のある私は絶対可愛い女子ではないはずなのに、また傑はそうして私を甘やかすから、つい嬉しくなってしまって私はまた彼の言うことを聞いてしまうのだ。気軽にそんなことを言わないでほしい。容易く私の心の中に踏み込まないでほしい。足を傑の腰に絡めてむくれる私を見下ろして、傑はまたいつもの胡散臭い笑みを浮かべながら「まあ、あいつ六眼のわりに、見る目ないからなぁ」と楽しそうに笑うのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
210307