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機械好き同士
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 基盤を取り外し電極を繋ぎ、息を吹き返したばかりの古びたラジオから漏れる音を聞くともなしに聞いていた。およそ人間の声とは思えないその雑音はどこぞの電波を拾っているようだが単語を聞き取るのは困難に思える。トップスの電波だろうか。いやそれはないだろう。トップスからこのサテライトまでは距離が開きすぎている。シティの民間放送が混線しているのかもしれない。考えて、どうせ俺にも遊星にも興味はないのだ、どうでもいいかと頭の中でキリをつけた。俺はこの喧しい機械的なノイズが好きで、あえてノイズキャンセラーなどを取り付けることはしなかった。これはこのままでいい。しばらくこのまま置いておこうと思う。組み立てるのはいつだって構わない。
 剥き出しの配線を眺める俺に、同じく機械いじりが趣味の恋人が「直さないのか、それ」と問いかけた。無表情な彼を振り返ることなく「まーね」と返す。

「……悪い遊星、暇だろ。何か飲むか?」

 折角俺の様子を見に来てくれた恋人に申し訳なくなり一応そう尋ねるが彼は「いや」と申し出を断った。

「雑誌とかあるけど」

「必要ない」

「疲れたら寝ててもいいよ」

「ああ」

 俺の提案は全て切り捨てられた。いつもとはまるで立場が逆だ。様子を確認すべく振り返れば、ジーンズを履いただけで上半身は全く裸の彼がふらふらと近寄ってくる。捕食されそうな恐怖と若干の期待に動揺しつつも再び手元に視線を落としてネジを固定する。ドライバーを持つ俺の手に、力強い手が重なった。ネジを回すことも出来ず硬直する俺の顎へ背後から伸びた手が触れて、そのまま後ろに引っ張られる。

「好きだ」

 痛むほど反らされた首を撫でられるとくすぐったさに声が漏れて、遊星は微かに唇に弧を描き微笑んだ。首元から滑り込んだ彼の手が俺の胸を撫でる。

「遊星、俺っ、まだ途中……っ」

「なら俺も混ぜてくれ。弄るのは好きなんだ」

 機械のことか俺のことかを問えぬまま俺の手からするりとドライバーが抜け落ちる。ジリジリと耳障りな声をあげるラジオにそれがぶつかって、やがてノイズはプツリと絶えた。

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100304