教師と十代
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遊城十代。彼は恐らくこのデュエルアカデミアで最も名の知れた生徒だろう。行方不明となってしまった前任のレッド寮寮長、大徳寺先生に代わり現在は僕がくだんの寮長となってはいるが、どの教員も、事あるごとに遊城十代の名前をあげる。いい時もあれば悪い時もある彼の評判は両極端だ。
「なあなあセンセー、俺ってやっぱ補習!? 補習イヤだけどさぁ、どうせするんなら先生と一緒がいいぜ!」
「何言ってるの。僕は寮長だけど、現国を教えて下さるのはクロノス教諭だろう? 補習も彼にご指導頂けるよ」
「ええー!? それマジかよ!!」
失礼なことに、大袈裟なほどうんざりしたような表情で十代くんは嘆いた。確かにクロノス教諭は癖の強い方ではあるものの流石に長く教鞭を執っていらっしゃるだけあり指導はとても分かりやすくためになるのだが、十代くんにはまだそのありがたみは分からないのかもしれない。今日の掃除当番を忘れずに遅くまで掃除に付き合ってくれる彼の精神は非常に誇らしい。だからといって担当教科でもない学科の単位が関わる補習を見てやれるほど、僕に権力はないのである。
「なんだよ、じゃあ補習の時間を無駄に費やすってことかよ……」
「補習の時間は無駄ではないし、そもそも予習復習をきちんとしていればそうはならないだろう? 大丈夫、先生と、寮に残ったみんなで夕飯を用意して待ってるから、しっかりクロノス教諭に教えて頂くといいよ」
「……俺も先生と一緒にメシ作りたかったんだけどなー」
ぽつりと呟かれた言葉に振り返ると、十代くんはややむくれ顔でこちらを見つめていた。彼が料理好きとは少し意外な気もしたが「じゃあ今度、夕飯の準備を手伝ってくれるかな?」苦笑しながらそう尋ねると、十代くんはとても嬉しそうな顔で頷いた。
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110117