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好き勝手する人
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 俺の作ったタルトは潰れていた。いや潰れていたというほど甘くはなく、食べ物であったことの一切を拒絶するかのように、まるで足で踏み付けたが如く姿にまで潰されていた。実際には踏んだのではなく男の長い指と大きな手の平で握り潰したのだが、タルトを作った張本人である俺の眼前で思いっきり、一瞬の躊躇すらなくそれを破壊された今の状況で、踏んだか握ったかなどはたいした問題ではない。
 長く骨張った指の隙間から零れる赤はタルト内部の、ムースの下に置いたイチゴジャムだろう。今では見る影もないほどにぐっちゃぐちゃになったそれは、ぼと、と高級そうな絨毯の上にこぼれ落ちる。勿体ない。タルトも絨毯も。

「……気に入らなかった?」

 床で沈静化するタルトの残骸から視線を上げ訊ねた。気に入らないのではないだろう、瀬人はこのタルトを食ってすらいないのだから。どうせいつもの気紛れだ、分かっている。

「あーあ……勿体ない……」

「ならば貴様が食えばいい」

 唐突に捕まれた肩に驚き身を強張らせると、無駄に威圧的な瀬人が俺を見下ろして言った。意味が分からず瞬きをする俺の顔にタルトを握り潰した手が触れて、べちゃりと不快な音と感触を塗り付ける。頬を撫でるそれは有無を言わせぬ強引さで俺の唇に張り付いて、これまた恐怖を覚えるほどの乱暴さで力任せに口を開かせると、指とタルトを無遠慮にも口腔へと押し込んだ。

「んぐっ、えっ、ぅう!」

 喉の奥に突き込んだ指がぐちゃぐちゃ音を立てながらそこを蹂躙する。カードを操る細い指は美しく鋭かったが今はそれどころではない。首や体を捻って逃げようにも瀬人の腕に阻まれて、俺は親鳥から餌を受ける雛のように、彼の手でいたぶられることしか出来なかった。舌が痺れて唾液が溢れる。抵抗すると指が舌の付け根から先端までを滑って思わず声が漏れた。顔が熱い。いや体もだ。愛撫にも似た動きに煽られ頭の芯がピリピリと疼いた。ダメだ瀬人、もう俺は無理だ。全身の熱に耐えられない。頼むから、早く、

「フン……いい顔だ」

 俺は彼の指に縋りつく。絡めた舌に、甘酸っぱいベリーソースが纏わりついた。

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100225