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GX軸の話
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「デュエルキング御用達のデッキホルダー、カードプロテクター、カードファイルに歴代デッキレシピ……遊戯、人気者だなぁ」

「どれも僕が使った記憶はないんだけどねぇ」

 俺たちがマジック&ウィザーズを知ったのは海馬との諍いがあった頃だというのに、今では町を歩けばデュエルをしている子供をちらほら見かけるくらいにはあのカードゲームは流行っていた。今やどの店にもその手の関連グッズやカードが売られているし、中には今俺が挙げたような、実際には遊戯とは何の関係もないような品ですらその肩書きを借りて売り捌かれていたりする。デュエルキングと名を馳せるからには避けられない運命だ、よくあることである。

「この前はデュエルキングティーポットなんかがあったぞ」

「ティーポットなんて生まれてこの方使ったことないのに? せめてヤカンにするべきだね」

 クスリと笑う彼は高校のときに比べ随分と大人びた気がする。こじんまりして幼かった面影はなく、近頃はいつか彼の中に存在していた名もなきファラオと似てきた気さえした。それでもかつての友と違うと感じるのはやはり、彼独特の柔らかい雰囲気があるからだろうか。昔より少しばかり背も伸び筋肉もついた遊戯が俺を振り返り、それなのに昔からずっと変わらない優しい微笑で俺の頭を撫でる。「遊戯、」もうすぐ彼はこの町を出る。目的は俺には分からないし、きっと彼は、俺とは交わらない道を行くのだろう。久しい再会はほんの数日間だったが、俺の胸は過去の思い出と、いつか遠い未来に過去として思い出すであろう今日の様々な記憶が、胸一杯に満たされている。

「案内ありがとう。楽しかったよ。……それじゃ、また」

 また、必ず会いに来る。
 そう囁いた彼の顔は去りし日の友の姿とよく似ていた。彼の体にビルの陰が落ち、華奢な背中が人混みに紛れ消えていく。未来は約束されているはずなのに何故か熱くなる目頭を押さえながら、俺は黙ってそれを見送った。

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100224