神威に気に入られた話
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 頼みがあるから来て欲しいと言われて呼び出された廃病院に足を向けたというのに、俺をここに呼び出した張本人はこともなさげに、ごくごく普通な口調で「用なんてないよ」などと言って退けたから驚きだ。バイトを断ってまで駆けつけた俺がバカなのか? そんなことはない、俺の体の下でにこにこ笑い続けるこいつこそ、バカなのだ。

「いつまでそうしてるつもり? 疲れないの?」

 しかも俺が必死に抵抗しているというのに、こいつはまるで無意味なことはやめておけと言わんばかりの表情だ。いや、実際俺の僅かばかりの抵抗など無意味もいいところなのだろう。俺の力などこの男の並外れた腕力には通用しないし、今だってこいつの体の上、よく言えばマウントポジションを取れたのだって、こいつのほんの気紛れだ。

「ふ、ざけるな……疲れる方が、まだ、マシだ……!」

 分かりやすく状況を説明しろと言われれば、俺はまず真っ先にこう答えるだろう。神威という夜兎族の男に強姦されかけ、ほぼ全裸で腹の上に乗せられている、と。全く、頭が痛くなりそうな状況だった。
 この廃病院に足を踏み入れて早々、背後から体を雁字搦めにするようにして抱き付かれたのが始まりだ。俺だって鍛えているし反射神経だって悪くない、むしろいい方だろう。それでも相手の動きを予測するよりも、反射するよりも早く手足の自由を奪われたのだからどうしようもない。神楽ちゃんの兄は、彼女の兄の名に相応しい強者だった。

「でもさあ、さっきからずっと手付いてるし、そろそろ痺れてきたんじゃないかな?」

 暴れているうちに脱がされた服は服としての機能は果たしておらず、引き倒されるような形で床にもつれ込んだ俺は絡まる衣類に邪魔されて、コンクリートにしたたかに体を打ちつけた。痛みに喘ぐ暇もなく神威の手が俺の腰を掴んで、引きずられるようにして腹を跨がされたあとこれもまたギャアと叫ぶ間もなく尻の中に指が突っ込まれた。神威の片手は俺の体内に収まり、もう片手は俺の腰をがっちり掴み下へ下へと圧をかける。俺は俺で、恐らく体の下に待ち受けているであろう凶器から逃れるため、両手を神威の腹に突っ張り、加えられる圧力に耐えている。それが現在の正しい状態である。

「大変そうだと思う心が少しでもあるなら、やめろ! あと、指! 抜け!」

 半ば怒鳴り散らすようにしてそう叫ぶ。幸いここは人通りなんてまずない廃病院の中なので人目を憚らずに済んだ。尻に埋まる指は今のところ動く気配がないから、それなら早い段階で抜いてほしい。腰を下げようとする凶悪な腕力に対抗するため両手が塞がってしまっているので、唯一の攻撃と言えば強気な言葉と視線だけだ。効果のほどは定かではないが。

「しょうがないなあ……分かった、抜くよ」

 へらりと笑ったままの神威が、何とも聞き分け良くそう答えたものだから不安になる。おかしい、俺の知ってる神威はもっとろくでもないバカ野郎なのに。考えているうちに尻を貫いていた指が動いて、ゆっくりと抜かれていった。ゆっくりゆっくり、焦らすような動きで指が内壁を擦っていく。「んっ……」思わずそんな声が出てしまい慌てて口を閉ざしてももう遅かった。

「うあっ、や、待て……!」

 指は何度も同じように往復する。抜こうという意思など微塵も見当たらないほど、それは優しくゆっくりと体内を蹂躙している。ゾワッと背中に痺れが走る。嫌だと思ってもどうしようもない。この男に慣らされた体は勝手に快楽を見い出して震えるし、抗おうにも力が入らず身じろぎすることすら出来なかった。

「ん、待つの? 抜けって言ったのに、風早の言葉は矛盾してるね」

「あっ、ひっ、ん、ちが……ぁっ」

 強い力で内側を擦られて目の前が白くなる。違う、決して抜いてほしくないんじゃない。それどころか早く抜いてほしいと思ってる。それなのに何度も何度も指が気持ちいいところを押し上げると息が止まりそうなくらい体が震えるのも事実だ。「ぁ……あっ、あぁ……」ぐちゅぐちゅ音をたてながら指が掻き混ぜると何も考えれなくなっていく。腰が痙攣して頭の中が白く霞む。いつの間にか硬く張り詰めた性器を神威が悪戯に撫でると自分でも嫌になるくらい甘えた声が廃病院のコンクリートに反響した。

「うあ、あぁッ、ひ、ぃ……!」

 気持ちいい。

「やぁ……め、ぇ……も、やだ……そこいやだぁ……!」

 尻の中が熱くて気持ちいい。
 ぐりぐりと容赦なく中を擦られて息が絶え絶えになっていく。体を支えるのが困難になって前のめりになって崩れると体が落ち、熱いものが尻に触れた。神威の性器だろうか。

「ほらほら、ちゃんと体支えないと入っちゃうよ? それともほしいのかな?」

 中を貫く指がそこを広げ性器の、焼けるように熱い体温が侵入してくる。みちみちと嫌な感覚を感じながらも大した痛みはないというのがまた泣けた。やめてとか嫌だとか言いながら勃起させているなんて俺はとうとう頭がおかしいのだろう。

「あー、ホント風早の中って気持ちいいね……狭いし、締め付けてくる」

 そんなこと一々報告しなくていい。指が完全に抜け落ち、代わりにデカイ性器がしっかり根元まで埋められる。体を支えることも困難になっている俺の腰をゆさゆさ揺さぶられながらの長い挿入は気が狂いそうなほど気持ちよかった。「はぁ……あ、うぅ……っ」腰を擦り付けるような動きにまた声が漏れる。ここが廃病院でよかった。人に見られないのが唯一の救いだ。緩やかな動きから徐々に内壁を抉るような動きに切り替えた神威がいつもの笑顔で俺を見上げている。性器をぐちゅぐちゅに擦られながらの律動に頭の中にまた白い靄が掛かっていった。

「ん……そろそろ、出そ……」

「あぁッ、かむ、い……かむい……!」

 涙を含む声に神威がアハハと笑って体を抱き締める。体中をガチガチに拘束されながら、身動き1つ出来ないままに奥を擦り続けられて、俺はもう限界だった。

「ィ、く……もぉ、っ、い……ッ!」

 熱い性器が体内を出入りするのを感じながら、がくがくと体が痙攣した。俺と神威の体の間で揉まれる性器がじんと痺れて視界が涙に滲む。

「ぅん、ゃ、はぁ、は……!」

 搾り取られるような快感に包まれてどくりどくりと熱を開放していく。溜まりに溜まったそれはいつもよりたっぷり時間をかけて流れ落ちた。息も絶え絶えに震えているとようやく神威が小さく息をつめて、それから何の躊躇いも考慮もなく、俺の尻の中へと精液を吐き捨てたのだった。

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