ユベルに愛される話
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毛布にくるまりうとうとと微睡みをさ迷うのはこの上ない至福である。肌寒い程度の気温ともなるとそれは絶対的な力すら伴って俺を縛り付ける。今朝も全く昨日と変わらなかった。
「航一、いつまで寝てるんだい。もうお昼だよ」
ゆさゆさと肩を揺すられたが気にしない。それより何故ユベルが実体化しているのか謎だが、前にも何度か俺の体を乗っ取って勝手に自分を召喚するということがあったので、多分それだろう。
「寒いからやだ……」
くるりと向きを変えれば背中側でため息が聞こえた。もそもそと毛布が動いて徐々に目が覚めつつある俺が首を動かし確認すると、はっきりと実体のあるユベルが毛布に潜り込むところだった。
「僕は暇だよ航一」
「やだって、お前足冷たい!」
「温めておくれよ」
「ユベルはそんな必要ないだろ!」
同じく毛布にくるまりぴったりと背中にくっついて、くすくす笑いながら彼の冷たい足が絡み付く。急速に体を冷やされ俺はまだ睡眠を欲する頭でいやいやと首を振ったが、それすらもユベルの腕により固定された。
「僕は暖かくて気持ちいいよ?」
優しい動きで頭を撫でられては大人しく黙るしかない。文句も言えず口をパクパクさせていたが次第に疲れた俺は渋々ユベルの頭へと腕を伸ばした。それに気付いた彼は少し頭を浮かせて、寝起きの俺には少しひんやりと感じる頭を腕に乗せる。彼が好きな腕枕だ。
「航一は温かいね」
「ユベルは冷たいけどな」
「だから、温めておくれよ」
「……しょうがないな」
ふぅと息をつくとユベルは甘え癖のついた子猫のように俺の胸へと頬を擦り寄せる。その頬を指先でつつくと彼は大きな目をきょとんと見張り、それからやや照れた様子で俺の背中に腕を回した。
ふにふに柔らかい頬を擦り、時折伏せられた瞳の縁に並ぶ長い睫毛をくすぐる。嫌なのか照れてるのか分からないが強い力で背中を締め付けられ、ほんのり赤みを帯びたユベルの目元にキスをした。
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