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身分違いの話
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 特別死刑執行部隊なんて言うと少しは響きがマシになるだろうが、やることといえばただの人殺しだ。素早く的確に最小限の被害で、とは養成所で耳が痛くなるほど聞いていて、お陰で俺は身を挺して仕事に取り組む、いわゆる仕事人間に成長してしまった。

「大丈夫ですか、宮里」

 第6部隊隊長なんて微妙な場所にいる俺は斬り込み隊長だ。他2名は俺を囮に援護射撃やトラップの設置といった後衛組で、例え実績は高くても生傷絶えない斬り込み隊長も含め、レスポンスとパフォーマンスについての評価はあまり高くない。それが現実だ。

「平気。そんな酷くないし」

「でも一応さ、医務室には行った方がいーよ! バイ菌入ったら困るしさー!」

「斎藤くんの言う通りですよ」

「ん……分かった」

 トラップを専門とする小柄な斎藤、そして銃火器を得意とする中西。接近戦では持ち味を活かせない彼らの手法は、近距離から中距離でやり合う俺をカバーとして暗躍してもらうには持ってこいだ。そんなこともあって相性もよかったし、チーム内での仲もいい。人の死を扱う仕事においてそれは幸いなことである。死刑囚に斬られた腕を心配してくれる友人たちに別れを告げて、俺は医務室へと足を運んだ。

 俺が怪我をしたという連絡は、無駄にグラマラスでやたらと体を触りたがる女医に伝わっているはず。だからてっきり彼女が待っているものだと思ったのに、そこにいたのは長身の男だった。長い髪を後ろで結わえた姿は相変わらず細身で綺麗で、何となく気圧された俺は思わず頭を下げる。

「こんにちは宮里くん。手当てしようか」

「式部さん……何故ここに?」

 彼に促されるまま椅子に座り控えめに問う。彼は消毒液とガーゼ、包帯などを用意して俺の前に座った。

「彼女は今日学会でいないんだって。だから宮里くんが怪我したって聞いて、代わりに僕が」

 破れたYシャツを腕の途中まで下ろし彼は笑う。消毒をしながら「嫌だったかな?」なんて問われて首を縦に振れるわけがない。促されるままイスに座ると、手際よく消毒用の道具を準備した彼は作業を始めた。

「それにしても……宮里くんはよく怪我をするよね」

 傷口に容赦なく染みる液体がもたらす痛みに目を細めながら式部さんの顔を上目に窺う。優しいような、困ったような微笑だった。
 怪我をするのは仕方ないことだ。中距離、遠距離でのサポートを受け有利に事を運ぶには前衛の俺が走り回るしかないし、サポートを行う2人の援護がなければ俺などすぐに反撃を食らってしまう。しかし第1部隊副隊長にそんなことを言ってもまさに釈迦に説法で、俺は曖昧に苦笑いを浮かべると口籠もって俯いた。細くて長い指が傷口にガーゼを貼り器用に包帯を巻いていく。すぐに手当ては終わるだろう。

「……切り込み隊長だもんね。怪我も仕方ないけど、気を付けてね」

 包帯を巻き終わり、俺の頭に優しく手が乗せられた。子供にするような優しさで髪を撫でる式部さんの顔は本当に綺麗で、俺は出来るだけにっこりと、彼に向けて笑いかけた。

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