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切彦とデートする話
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※女装男子×切彦

 彼女と手を繋いで外を出歩くようになったのはいつ頃からだったか。彼女の細い右手を俺は左手で握り、歩く速度に合わせてゆうるりゆうるりと前後に揺らす。彼女は変な所で大胆なくせに変な所で恥ずかしがりだから、手を繋ぐようになった頃は女顔の俺に対して「女の子同士で手を繋いでるみたいで恥ずかしいです」と、そこかよと思わずツッコミたくなるほど酷く狼狽していたのを思い出した。

「あ、あの……」

 握り返されていた手が軽く引かれて俺は切彦に目を向ける。ホットパンツにロングブーツという服装と、サイドのみをリボンで結わえた髪型があるからこそ何とか女の子と判断出来るが、それがなければ少年か少女か、判断が難しいだろう。クールな彼女は相変わらず無表情だった。
 何を言おうか迷っているらしい切彦がようやくアレ、と指差した先には、いかにも女の子が好みそうなコミカルでポップな看板を掲げた雑貨屋がある。指し示されたそれを一瞥してから俺はまた切彦へと視線を戻す。

「入る?」

「! は、はい……あの、選んであげます」

「え?」

「髪留め。似合うと思うのです」

 そう言いながら次に指したのは俺の顔で、そういえば伸ばしっぱなしの前髪が邪魔だな、なんて思い出す。比較的小柄で比較的女顔で比較的童顔な俺は服装が服装ならこれまた中性的であり、彼女からすればどうやら俺はテイのいい着せ替え人形も兼ねているようだったので、苦笑いを浮かべながらも彼女の手を引いて誘導した。
 どちらが男か女か分からないような俺たちだが、しかし切彦さえ喜んでくれるのなら男も女も演じてやろうと、むやみやたらにファンシーなドアを開きつつほくそ笑むのだった。

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100224