×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


ドS少女×切島少年
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 家に誰もいないから、と誘えば普通その後の展開を少なからず想定するものだ。特にこと恋人同士であればそれは尚更であり、だから切島が甘奈にそう声をかけたとき、当然切島本人にはその意図があった。下心と呼ぶにはあまりに順当で、年頃の男子高校生ともすればそれは責められないことである。甘奈もそれを理解していると、切島はそう認識していた。
 ところがどうだ。部屋に連れ込み「イスが1つしかないから」という自然な流れでベッドへ彼女を誘導し、話もそこそこにいざキスを、となったとき、甘奈は突然困ったように「待って」と制止をかけてきた。一体ここに来て何事かと切島が問えば、彼女は「キスはいいんだけど、今日生理だから……」などと言う。おいおいおい、それを今言うか。切島は咄嗟にそう思った。それならそうと初めに釘を刺してもらいたいものではあるが、彼女の気持ちを考えればそれを責めることは出来るはずもなく、性欲を持て余す青年はさも残念そうに「そっか。んじゃ仕方ねーよな」と苦笑いを浮かべる他はなかった。

「ごめんね、切島くん」

「あー、まあ仕方ねえだろ。生理だし」

 切島には生理というものがどういうものか分からない。知識としてはあるものの、男である彼がそれをどのようなものとして認識しているかは想像に易いもので、彼は例に漏れず、股間から出血する生理現象とだけ認識していた。血を見れば萎えてしまいそうなので無理強いして抱かせてほしいと言うわけもなく、だからと言って口でしてくれと告げるほど肉欲に支配されていたわけでもなく、そういう日もあるから今日は仕方ないと、彼はそう思って諦めようとした。すると、意外にも彼女である甘奈の方からその申し出があった。

「ね、口でシてあげよっか?」

「は? え、いいの?」

「うん。だってガッカリしたでしょ?」

「いや、ガッカリっつーか……いやまあ、うん。多少は……」

 切島は素直であった。正直な返答に甘奈が笑って、ここは気を遣って嘘をつくべきだったのだろうかと青年はヒヤリとする。甘奈という少女に好意を寄せて告白したのに体だけが目当てだと思われるのは些か心外であったし、中々なびかない少女に猛アプローチを仕掛けて交際までこぎつけた手前、下手なことを言って彼女を傷付けるのだけは何としても避けたかった。

「いいよ、シてあげる。こっち来て」

 少女が叩いたのは自分が腰をかけるベッドの隣だ。彼女の前に置いたイスに座っていた切島は導かれるままに指定された場所へと移動して向かい合う。この時点で青年の胸は期待に膨らんでいて、少女も好奇心に瞳を輝かせていた。初めての行為というわけではない。しかし双方とも回数を多くこなしているわけではないため、未だ新鮮な高揚がそこには存在した。少女の手が切島のベルトにかかり、男とは違う繊細な指がそれを外していく。「あー、脱ぐよ」緩やかな動きに我慢が出来なくなったのは切島の方で、宣言すると彼は手早く制服のボタンを外したあとファスナーを下ろした。下着の中では期待と興奮に半分ほど頭を持ち上げる彼自身がひくりひくりと揺れている。甘奈の手がそこへ伸び、細い人差し指がツンとつついた。うお、と青年は声を上げる。

「切島くんのカチカチになってる。ねえ、個性使ってる?」

「バッカ、下ネタゆーな」

「ごめーん。じゃあ舐めるね。横になってほしいな」

 あは、と甘奈は屈託なく笑った。切島の個性は全身を硬化するものだ、その手の揶揄は散々受けていたがよもや彼女にまでそんなことを言われるとは思っていなくて、純情な青年はその日、少しばかりショックを受けた。とはいえそんなものは興奮に比べれば些細な感情で、彼はまた指示に従いベッドの上に横になる。寝転ぶと分かる股間の隆起に甘奈の手が伸びて、トランクスを引き下げると、ウエストのゴムの部分から切島の性器がこぼれ落ちた。視線に晒されるとそれは一回りほど膨らんで、自分の足元にある性器とそれを眺める彼女の顔とが切島の視覚を刺激した。少女の手が、肉棒に触れて優しく上下にさすり始める。

「わあ、熱い。これ、触ると気持ちいいの?」

「んー、下の方はあんまりかな。多分」

「ふーん。じゃあ先っぽは?」

 好奇心旺盛な彼女の舌が伸びて性器の先端をれろ、と舐める。敏感な場所を擦る粘膜の感触に、切島の腹がピクリと波打った。

「う、それは気持ちいいぜ……」

「そうなんだ? じゃあここ狙い撃ち〜」

「う、おっ、あぁ……」

 ちゅぱ、と音を立てて甘奈の桃色をした唇が亀頭を包み込んだ。温かい粘液が包み込みうねるように締め付けると切島の喉から切迫した吐息が漏れる。ベッドの上で四肢を投げ出し彼女に全てを任せるのは男としてのプライドが、などと考える余裕は既になくなっている。見下ろす先、自身の先端を口に含んで軽く吸いながら上下に頭を揺らす甘奈は、丁度彼女が好んで舐める棒付きキャンディーを味わう姿によく似ていた。根元を手でさすりつつ先端をしゃぶられてはまだ刺激に慣れていない青年のそれはなす術もなく、たった数分で、彼は呆気なく射精してしまった。腰が弾みシーツを握る指に力がこもる。足元の少女が唇を離し、ニッコリと切島に笑いかけた。

「きりひまくん、いっふぁいれたぁ」

「わ、わりィ! 待ってくれ、ティッシュ……」

「んー……んっ。飲んじゃった」

「は!? バカ、そんなん飲むなよ!」

「ねえ切島くん、そのままじっとしててね」

「え? ちょ、おい……」

 唇をぺろりと舐めた甘奈の手が切島の性器を握り直すのを、青年は言葉もなく見守った。男のものよりも小さな手の平が亀頭を包んで、その窪みで覆い隠すようにくるりくるりと撫で回す。「ちょっ、待っ……!」射精したばかりで過敏になっているそこに加えられる刺激は気持ちいいなどという生易しいものではなかった。くすぐったいような苦しいような、形容し難い感覚に切島の口からは意味をなす言葉は出なくなる。よもや恋人に亀頭責めをされるとは思わず切島は困惑しつつも「あっ」とか「ひっ」とか感嘆や驚愕、そして僅かばかりの不安を滲ませた声を漏らしながら、それでも何とか責め苦を与える少女の動きを止めようと腕を伸ばした。無邪気そうな笑い声をあげる少女はそれを指先で払うと「もー、だーめ。両手は上。邪魔したらもうエッチしないからね?」冗談か本気か、妨害は許さないと言わんばかりに強く跳ね除ける。こうなってしまえばもはや切島には抵抗などすることは出来ず、せめて暴れて甘奈に怪我をさせることだけはないようにと、青年は頭上できつく拳を握った。

「あ、すごい。切島くんのチンチン、ピクピクしてきたね。どう? 気持ちいい? それとも苦しい?」

「く……っ、ぐるしい……っ!」

「やっぱ苦しいんだ? ならもうちょっと我慢しようね」

「バッカ……かん、な……ヤベ、これ変……! やめ、やめろって……!」

「やめなーい。切島くん男の子でしょ? 我慢してね」

 切島の喉からは獣に似た唸り声が溢れ出す。握り締める拳に力が篭りピキピキと音を鳴らして体が硬化していくのが彼自身にも感じられたが、とてもそれを制御出来るだけの余裕はない。額に汗を滲ませ歯を食い縛る青年の背中はじっとりと湿り、シャツのみならずベッドまでもを濡らしていた。息を荒げる犬のように短い呼吸を繰り返し、快楽とは言い難い強烈な感覚をどうにかこうにかやり過ごすため手と足の指がシーツを掻き抱く。限界は間近に迫っていた。

「あ"ッ……あ、ぐうぅ……! 甘奈ァ、マジで、ヤバ……あっあっ、漏れちまうって……んぐ……っ!」

 それは尿意にも似た感覚だった。脳が焼き切れるかと思うほどの苦痛に腰が震えて、堪えていたものが性器の先端から迸った。間欠泉を思わせる断続的な、射精なのか放尿なのか、とにかく体液が幾度も排出されて、切島の引きつった喉がか細い鳴き声をあげる。白む視界で捉えた恋人の顔はいかにも愉快そうな満面の笑みで、青年は今後の性事情に一抹の懸念を抱きつつ、筆舌尽くし難い疲労感に体を投げ出すのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

161017