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失禁する話
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 主と光忠がまぐわっているのを見てしまった。主は楽しそうだったし、光忠もあの性格だ、多少の色をつけてはいるだろうが、それなりに乗り気のようだった。笑いながら腰を振る光忠と、それに覆いかぶさって光忠の額に口付ける主。距離があったので陰部がどうなってるかまでは見えなかったが、まあ、挿入はしていたのだろう。夜中に厠など行くものではない。

 あの男が誰とでも色事を行うのは知っている。それが悪いことだとか、腹立たしいだとか、そういうことは思わない。俺たちは人間ではないし、九十九神に触れ同じものを喰らう審神者だってもはや人の領域ではありえない。いわゆる道徳心とか常識とか、そんなものはどの刀も、審神者ですらも持ち合わせていないのだ。
 が、それでもなんとなく、何故か分からないが、胸の中が靄に包まれたような奇妙な感覚があった。笑う光忠の汗に濡れた顔はひどく満ち足りているようだった。知っている。主とまぐわった瞬間、言葉にならない充足感で満たされるのだ。抱き締める体温、耳に吹き込まれる吐息、胸に伝わる心臓の鼓動、その全てが、それだけが、自分の世界になる瞬間だ。まぐわう2人を見たとき、俺は光忠になりたいと、そう思った。おかしなものだと自分でも思う。

「大倶利伽羅。こんな時間に難しい顔をして。どうかしたかい?」

 廊下で庭を見ながら佇んでいた俺の背後で、主の声がした。振り返るとそこには主と、その少し後ろに光忠が立っている。気を抜きすぎて2人の気配も感じなかった自分に呆れる。

「……別に。厠に行こうとしただけだ」

 なんと答えればいいか分からず素直にそう告げた。そういえば俺は厠に行こうとしていたはずなのに、尿意はすっかり消えてしまっていた。
 ちらりと目をやった光忠の顔は蒸気して赤らんでいる。着流しの合わせから見える胸元には赤い鬱血痕が覗いていて、つい先程までしていただろう行為が脳裏によぎった。

「じゃあ主、僕は寝るよ。明日の朝餉は焼き魚だから、楽しみにしててくれ」

「ああ、ありがとう。おやすみ光忠」

 光忠が主にそう言って横を通り過ぎる。俺とすれ違うとき、奴が小さな声で「遅くならないようにね」と言ったのは恐らく聞き間違いではないのだろう。
 部屋に戻る光忠の背を見送って、俺と主は少しの間そこにいた。なんと声をかければいいのか全く分からない。光忠だったらこういうとき上手く相手にすり寄るんだろうが、俺にはそれが出来そうにない。動くに動けない俺が固まっていると、不意に主が手を伸ばした。

「おいで。厠に行くんだろう?」

「……1人で行ける」

 思わずそう言ってしまう俺に主は微笑んだ。聞き分けのない子供を見るような慈愛のこもった眼差しをした男は、俺の手を取って歩き出す。俺と違って主の手はぬるくて少し湿っている。それを不快だとは思わなかった。

 厠について、せっかく来たのだし、当初の目的通り俺は小便をすることにした。主は外にいるようだったので、とっとと済ませてしまおうと便器の前に立つ俺が陰茎を取り出すと、ひょっこりと顔を覗かせた主と目が合った。悪戯っぽく口元に笑みを浮かべた男が俺の背後に立って、背中を抱き締めてくる。あたたかいが、今ここで抱き着かれると邪魔で仕方ない。抵抗しようと体をよじろうとした瞬間、主の手が着流しの中に滑り込んだ。

「お、おい……」

「さあ、おしっこしような」

 できるか、と心の中で応答する。みなに支給されている洋式の下着の中に男の手が潜り込んで、何を思ったか、それを引きずり下ろした。厠で下半身を露出させられ絶句する俺に目もくれず、主は足元にしゃがみ込む。「少し足を広げて」その言葉通り足を広げてしまう自分の愚かさに頭が痛くなる。

 主の手が尻を掴んで左右に広げた。風が通ってひんやりする。なんだこの状況は。まじまじと尻の穴を見られる羞恥に顔が熱くなる。蹴り飛ばして部屋に帰ればいいものを、黙ってされるがままになっている自分自身が一番理解出来なかった。

「ひっ……!」

 れろ、と尻の穴に生暖かい感触が伝わり思わずそんな悲鳴があがった。見なくてもわかる。尻の穴を舐められたのだ。何を考えているのだこの男は。文句を言うより早く、舌が再びそこに触れて、今度は穴にじっくり押し付けられる。ぬめる舌が生き物のように尻の穴をくすぐり中に潜ろうとほじっている。あまりのくすぐったさにすすり泣きのような声を止められなかった。

「あっ……ひ……んんっ……や……」

 ぺちょり、ぺちゃり。猫が水を飲むような音が厠に響いている。ちゅうっと吸われると腰が引けてしまって、その度に主の手が俺の腰を引き寄せた。
 小便をするために握っていた陰茎が俺の手の中で硬くしこって立ち上がっている。何も考えずそれを前後に擦ると、気持ちよさに腹の筋肉が引きつった。

「上手だよ大倶利伽羅。そのまま続けて」

 主に促されるまま手を動かした。尻の穴を舐めしゃぶられながら陰茎を擦る。くすぐったいようなゾクゾクした感覚がそのまま股間に注がれるようだった。涎を垂らしながら尻を突き出す自分の格好に恥じらう余裕もなくなっていく。ちゅぱ、じゅる、ちゅくちゅく、ちゅるる、容赦なく嬲られる尻の穴がヒクついて足が痙攣する。

「あっ、あっ、あっ、あっ……」

 陰茎を擦る手が早まっていく。気持ちいい。尻の穴に柔らかいような固いような奇妙な感触の舌がねじ込まれる。穴がそれを締め付けて全身が硬直した。ふう、ふう、獣のように息を荒くしながら自分で陰茎を責め立てた。出てしまう。主が尻の穴を吸う。

「ひぃっ……おあ"っ……あ"っ、あ"ー……っ」

 ぶちゅっ、とひどい音がなった。手の中の陰茎が脈動して、先端から溢れた白濁がピチャピチャと便器に落ちる。腹と喉をヒクつかせながらもまだ手を上下させる俺の後ろで、主が「いい子だね」と囁いた。背後から伸びた主の指が、かすかに揺れる陰茎の先端をくるりくるりと撫で回す。果てたばかりで敏感なそこをいじられ「あ"あ"あ"ッ!」情けない俺の叫びが口をついた。

「あ"っ……み、みるな、待て、だめだ……っ」

 尻に顔を埋めていた主が離れたのが分かる。びしゃ、と水が便器を叩く音が聞こえた。

「あ"……っ……あぁ……」

 じょろろろろ……と小便が漏れていく。量の多いそれは陰茎をいじっていた主の手を濡らして便器の中に流れていく。止めようにも止められなくて、震える手でどうにか陰茎を支えることしか出来なかった。

 全部出し終えたあとも俺は動けない。いくら気持ちよかったとはいえ、いくら溜まっていたとはいえ、主の前で失禁してそれを掛けるなんて。子供でもこんな真似はしないだろう。
 情けなさと恥ずかしさに目元が熱くなって震える俺の頬に、立ち上がった主が優しく口付けた。濡れていない方の手で俺の頭が撫でられる。

「ありがとうな、大倶利伽羅。恥ずかしかったね、ごめんね」

 主は笑っている。なだめるように額や頬、目蓋に口付けては頭を撫で回す。ギュッと胸が苦しくなるのを感じた。

「その……手が……」

「いいよ。お漏らしするくらい気持ちよくなってくれて嬉しい限りだ」

 汚して悪かったと一言告げたかったが、そう返されてしまってはもう何も言えず、俺は曖昧に頷くだけだった。

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150501