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お尻を開発される話
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「光忠は細身に見えるのに、意外と筋肉があるね」

 夜、主の部屋で服を脱いだときにそんなことを言われた。今まで特に意識したことがなかったというか、本丸には筋肉の塊みたいな男たちが複数いたし、気にしたことがなかったのだと思う。自分の乳首の大きさが気になりはじめて以来、近頃はあまり人前で服を脱がないよう気を遣っていたため、包み隠すことなく真正面からそう言われると、なんだか急に恥ずかしくなった。脱いだ服を畳んで枕元に置くと、主がちょいちょいと手招きをする。

「脱ぐと凄いなんて、お前は格好いいね」

「え? そ、そうかな……あー、鳩胸っていうのかな、僕。胸が大きいからさ……そう見えるのかも」

「確かに光忠の胸を見てると、乳首を吸いたくなるよ」

「もう……それはいつもだろう?」

「はは。違いないね」

 手招きに従い近寄る僕の胸を、主の指が辿った。首筋を撫でて、人差し指が胸へ落ちる。いつ乳首に触れるのだろうと期待している僕がいる。意識すると乳首が徐々に膨らんでいくのが分かってしまった。顔が熱くなって思わず俯くと、主の唇が僕の首筋に吸い付いてきた。薄い皮膚をたどる舌の感触に体が震えてしまう。

「ん……なんだい?」

「光忠、お前は可愛いね。乳首を立たせて……期待してる」

「あ、主……意地悪だよ……」

 ごめんな、と主が耳元で笑った。僕より小柄なくせに、そういう声がセクシーでずるいのだ。優しい声音が耳の中に吹き込まれて、ゾクゾクする。ゾクゾクするとまた乳首が硬くなってしまう。

「あっ、」

 爪の先が、微かに僕の乳首を掠めていった。左側の乳首がますます大きく膨らむ。一目で左右の大きさが違うと分かるそれは主の寵愛を受けた証だと、最近ではそう思うようになってきた。最初こそくすぐったいだけだったのに、今ではほんの少しいじめられただけで股間まで膨らませてしまう始末である。僕は中々、我慢がきかないみたいだった。

 こうして主の部屋で行われる秘め事ならばまだいい。いくら興奮しようがそれを見ているのは主だけだったし、主もそれを淫らだと喜んでくれる。しかし主がちょっとした悪戯心で、みんながいるような場所や廊下で僕の乳首をさすったときは、下腹部にわだかまってしまう熱がつらくて仕方なかった。早く2人きりになりたい、早く触れてほしい。そんなことばかり考えてしまう。仲のいい大倶利伽羅辺りには、僕のそんな下卑た思考は知られてしまっているのかもしれない。

「光忠のここ、大きくなってきた。もっと格好良くしてあげようね」

 主の指が、剥き出しの陰部に触れた。緩やかに頭をもたげるそれをやんわり握り込まれて唇を噛む。期待で胸が破裂しそうだ。乳首を吸われながら陰茎を弄られる快感はとても忘れられそうにない。
 正座で座る僕が両膝を開くと、主の手がその奥へ滑り込んだ。ぶら下がる陰嚢を手の平が覆って軽く揉みしだく。腰が引けるような、なんとも言えないふわふわした感覚。目を伏せてその感触に浸っていると、僕の鎖骨を舐める主が不意に光忠、と名を呼んだ。

「夜伽をする気はあるかい?」

 夜伽。普段なら耳にしないその言葉は、閨を共にするという意味だ。それはつまり……伏せていた目を見開く。主の瞳がこちらを見つめている。ガラス玉を覗き込んだような、何を考えているのか分からない瞳だ。

「い……今の状況は、夜伽じゃなかったんだ?」

 2人きりの空間で裸になり乳首を吸う時点で十分に夜伽だと思っていたが、どうやら主の言わんとすることは違うようだ。きっと清光くんや小狐丸さん、そして恐らく大倶利伽羅もしているようなことだろう。僕の認識はまだ甘かったのだと実感して、一瞬、返答を躊躇する。

「それって、もしかして……お尻を使う……ってことかな……?」

 ああ、と。主が頷いた。




 僕は人にお尻を弄らせたことはない。もちろん陰茎だって主以外に触らせたことはなかったし、時代柄同性同士ということに偏見はなかったが、いざ自分が尻を駆使するかと思うと、全くの未知の世界に若干恐怖しているというのが本音である。
 絶対痛い。絶対苦しい。大体お尻は本来出すところなのに、そこに何かを入れるなんて信じられない。そう思っていたのはほんの数刻前で、自らの葛藤に苛まれる僕は現在、主の前で両足を開いていた。

「痛かったらやめるからね」

「う、うん……まだ平気そう……」

 お尻の中には主の指が収まっている。もっととんでもなく痛いものかと思っていたのだが、主が用意してくれた未来で使われているという変わった潤滑液とやらのおかげか、想像していたよりもずっと痛みも違和感も少なかった。確かにお尻にものが入る異物感はあるものの、排泄の延長線上だと思えばたいしたことはない。包丁で指を切る方が余程痛いくらいだ。
 僕の余裕を見た主がほんの少し微笑む。いい子だね、我慢上手な光忠は格好いいよと時折囁いて、まるで僕をなだめているみたいだ。子供じゃないんだからこの程度何てことはないのに、やっぱり主は優しいなと思う。

「少し動かすよ。光忠の気持ちいいところを探そうか」

 気持ちいいところとやらがお尻の中にあるのかどうか。未開の地へ到達した僕は多少緊張していて、さっきまでみっともないくらい勃起していた陰茎も今は少し萎えてしまっていた。頭も冴えてきてしまったので妙な感覚だけが尻に残っている。主が舌先で僕の乳首を撫ぜて、尻の中にある指がゆっくり動き出す。動くとちょっと気持ち悪いけれど、まだ我慢出来そうだ。

「ん……んん……う……」

 多分、指が内側を撫でているんだと思う。我慢は出来そうだけれど、さすがに声をあげないのは無理そうだった。思わず眉間にしわを寄せて呻く僕を見た主はすぐに顔を上げて、再び耳に唇を寄せる。

「光忠、舌を出しなさい」

「え……こ、こう……? あ、んむ……!?」

 言われるままに舌を伸ばすと、主の舌がそれを舐めた。にゅる、と絡みついた舌がすぐに僕の口の中に滑り込んで、そのまま口腔を舐めまわされる。すごい。ゾクゾクする。なんだこれ。乳首を吸われるのとは違う、粘膜を愛撫される感触にぶるっと身震いする。頭の中が真っ白になっていく。主の舌が僕の舌を押し潰して、ぢゅるるるっと吸った。気持ちいい。頭が痺れるみたいだ。「あふ、んちゅ、んあ……んむ……」僕の鼻から奇妙な上ずった声が抜けていく。萎えていた陰茎が膨らみはじめると、すかさず主の指がそこに添えられた。ビクッと腰が弾むのをとめられなかった。

 両足を開いて、主の手で尻と陰茎を弄られて、舌で舌を愛撫される。自分の体が自分のものではないような、微かに感じる恐怖に混じって快楽が背骨をかけていく。舌を吸われると腰が震えるほど気持ちよくて、僕は口から唾液が垂れるのもお構いなしで舌を伸ばした。伸ばした舌を主が吸う。真似して彼の舌を吸うと意地悪するように彼の指が亀頭をくすぐって、僕のものとは思えないような甘ったれた声が部屋に響いた。
 口付けがこんなに気持ちいいものだったなんて。知らなかった。知ってしまった。僕はまたクセになってしまう。肌が粟立ち乳首が痛いくらいに張りつめていた。たりない。ここも吸ってほしい。舌で押しつぶして、乳首もたくさんいじめてほしい。物足りなさに震える僕の顔を見た主がくすりと笑った。

「いやらしい顔をしてるよ」

 主の舌が乳首を嬲り、チュクチュクと吸った。

「はあぁっ……あっ、あぁっ、それ……っ」

 陰茎がピクピクと動く。だらしなく液体を垂らし続けるそこを、次の瞬間には指の腹で擦られてしまった。ネチョ、と粘液が音を鳴らす。

「ああぁッ、あぁるじぃ……っ! だめだよ、でる、で、んぅっ、ちゅ、あっ、ひぃっ……!」

 叫ぶ余裕すらなかった。目の前が点滅している最中に再び口付けられ、息も出来ぬまま無理矢理押し上げられるような強い快感に全部の意識が持っていかれた。陰茎と尻からはちゅぽちゅぽと音が鳴っている。体中がきもちよかった。主の手に陰茎を押し付ける。太腿が痙攣して呼吸がとまる。でてしまう。だしたい。主にたくさんしぼりとられたい。硬直した舌をしゃぶられるぬるぬるした感触。震える陰茎から精液がどろっと腹に落ちた。締め付けたお尻の中がじんわり熱を持ったように心地よくて、僕はろくに吸えない空気を、浅く何度も吸っていた。

「あっ……あぁっん……はぁっ……はぁっ……」

 ドクドク脈打つ心臓が少しずつ動きを緩めていく。自分でもどこを見ているか分からない中、ようやく目の前で影を落とすものが主の顔だと気が付いた。主の唇は赤く湿っている。僕と彼の唾液で濡れていた。
 なんとか呼吸を整えようとする僕の陰茎を主の手がこすって、そこからまだ残っていた液体がとろりと溢れ出す。「んっ」と甘えた声が僕の喉から溢れた。

 こんなに刺激的な世界があるなんて、考えもしなかった。主のほんの気まぐれから始まった淫らな世界に足を踏み入れた僕は、もう元の健全な世界には戻れないのだと思う。でももうそんなことすらどうでもよかった。主が僕にくれる悦楽はとても甘美で抗いがたくて、一度知ってしまうと抜け出せない。それは身をもって知ったことだ。
 含み笑いを浮かべる主は息を切らせる僕の頭を優しく撫でてくれた。あたたかくて心地いい。
 ああ、大倶利伽羅もきっとこの心地よさがクセになってしまったんだな、と、何となく友人の顔を思い浮かべ、すぐにそれを打ち払うように僕は頭を振った。

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160428