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政宗と
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「今日はいい月だ……」

 空を仰ぐ政宗が呟いて、私はそうですね、と相槌を打った。私の左に座る政宗の瞳は眼帯に遮られ窺えないが、薄青い闇にぽっかりと浮かぶ月を見上げる彼の顔は穏やかである。荒くれ者の印象ばかりが先立つが、時折憂いを帯びた表情をする彼の顔が、私は好きだった。

「綺麗だ……」

 薄い唇がまた囁いて、少しだけ笑みの形を浮かべる。見れば見るほど彼の横顔は綺麗で、青白い月明かりを受けて浮世離れした神々しさのようなものがあり、正直なところ、私は月よりも彼のその肌に目を奪われていた。

「HA……清良、さては俺に見惚れたか?」

「え、なんで……」

 驚いて目を見開く。彼の右目は眼帯に隠されていて、死角となる私の顔は見えないはずだ。しかし政宗はこちらを振り向くと、月明かりで燦々と輝く瞳を優しく歪めた。低い声が笑みと共に零れ、私の頭に骨張った大きな手が乗せられる。

「清良のことだ、見なくても分かる。……愛してるからな」

 最後に呟かれた言葉はとても小さく風に流されてしまいそうだったが、それでも私の耳にはしっかりと届いた。政宗の手が私の手に重なって、私たちはまたぼんやりと、言葉もなく空に浮かぶ白い月を眺めていた。

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