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お題:ネクタイ
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 だりィなぁと呟いた沖田さんは上着を脱いで私に渡した。私はそれを受け取って、畳んでシートの上に置く。彼は二度目、私は今年初の花見である。仕事の仲間たちと花見をした沖田さんはまるで興味のない目で桜を見上げてシートに腰を下ろす。やたらと布を使ったフリルのネクタイの首元を指先でくつろげる姿はなんともダルそうだ。

「ごめんね、付き合わせて」

 水筒のお茶を注いで渡すと彼は目を泳がせて別に、と呟いた。素っ気ない態度を取ってみるくせに重箱を広げると沖田さんの目がそれに釘付けきなる。料理が得意でよかったと思う瞬間だ。

「……えらく気合い入れたもんでさァ」

「うん、おいしいものを食べてほしかったから」

「そりゃどーも」

 お箸を渡すと彼は嬉しそうな微笑を浮かべながら玉子焼きを口へ運んだ。もぐもぐと咀嚼する姿は年相応で愛らしい。普段と同じほとんど無表情の彼はぐっと親指を立ててみせた。おいしいようで一安心だ。
 しばらくそうして、それぞれ口を動かしながら空を見上げていた。時折思い出したように短い話を聞かせてくれる沖田さんはいつもより柔らかい口調だ。他愛ない会話が、静々と繰り返される。

「……うまい」

 ぽつりと囁いた言葉に笑みを返す。ふわりと風に揺られた桜の花びらが舞落ちて沖田さんの肩を染めていく。

「2回目だがまァ……こんだけうまいもんが食えるなら……」

 2回やっても悪かァねェかもな、と照れの混じった声は小さかったが、それはきちんと私の耳には届いている。
 料理を気に入ってもらえてよかったと微笑む私をチラリと窺った彼はふっと少年らしい表情で笑って、

「次も付き合ってやらァ」

 そう言った。

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