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同級生
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 テスト期間に入った。テスト期間中は全ての部活動が休みになり、授業も午後1までの短縮授業となる。テスト自体は好きでも嫌いでもなかったが、いつもは学校に5時まで拘束される時間が4時間近く短くなるという利点だけは好きだった。

「おい、神田。帰り付き合え」

 いつもは何となく教室を出るのが同じ頃の友達と帰るが、今日は違った。例に漏れず休止中のバレー部員、つまり影山がそう声をかけてきたのだ。用件も拒否権もない簡潔すぎる言葉に周りにいたクラスメイトは驚いていたが、俺は既に慣れっこだったし、何より普段帰りを共にしない影山と帰るのがほんの少し嬉しくて迷わず頷いた。

「影山が明るいうちに帰るのって珍しいよな」

 靴を履き替えたあと、校門を通る俺が言う。半歩遅れて続く影山は「あー」と呟いた。

「いつも部活あるし」

「だな。で、付き合うってどこ行くんだ? お前勉強しなくていいの?」

「お前いっつもまっすぐ帰ってんの?」

 俺の質問には一つも答えない辺り影山だなあと思う。もしかしたら目的などなくて、ただ一緒に帰ろうと、それだけのことを上手く言葉に出来なかっただけかもな、と推測した。だとすればこれは恐らく素なのでどうしようもない。

「俺はゲーセンとか……コンビニとか。結構ダベッてる。影山は?」

「部活終わったら坂ノ下寄って肉まん食って帰る」

「影山はわりとまっすぐ帰ってんじゃん」

 まるで真面目だと言わんばかりの口振りで言われた言葉をそのまま返してやった。そうすると影山は少しムッとしたように唇を突き出し「うっせ」と答える。運動部は帰宅が遅いので何かしら腹ごしらえが必要なのだろう。

「んじゃ、行く? 坂ノ下。肉まんあるかな」

「……俺ピザまんな」

「えっ俺がおごるわけじゃないよな!?」

「ちげーの?」

「ちげーよ!」

 ほんの少し、ちょこーっとだけ、影山の口が笑った。学校ではあまり見ない表情で、こいつも人並みに笑ったりするんだな、なんて失礼なことを考える。体格がよくて顔が険しくて言葉が足りないので怖く見られがちだが、表情を心がければもう少し取っつきやすいのかもしれない。

 坂ノ下商店に寄って結局ピザまんを買わされた俺はサイフをしまいながら影山に目を向ける。モリモリかぶりついて咀嚼する姿はほとんど動物で、思わずちょっと可愛いじゃん、なんて思う。

「影山、時間ある? 行きたいとこあるなら付き合うけど」

 肉まんを平らげる頃には、俺はすっかり彼が部活をしていない帰宅部男子が遊ぶ帰り道を辿りたいのだと、勝手に解釈していた。帰ってテスト勉強に勤しむタイプではないと知っていたし、多分それはあながち間違いではなかったのだと思う。だから彼が「神田んちどこ?」と聞いたとき、俺は質問の意図が分からなかった。脈絡がなさすぎる質問に答えると「俺んちの通り道だな。寄っていいか?」と更に問われる。ここでようやく、影山が俺の家に遊びに来たいと言っているということに気付いて、俺はあたふたと言葉を並べた。

「言っとくけど、部屋片付けてないから汚いぞ!?」

「別に俺は構わねーけど。無理なのか?」

「いや、大丈夫! 影山って人の家に行くイメージなかったからちょっとビビっただけっていうか……」

「あー……別に。行くときゃ行くけど」

 答えに迷ったのか影山の目が右に逃げる。言葉に詰まったり照れたりするとすぐに目をそらす影山の癖に気付いたのは最近だ。朝脱ぎ散らかした服をどうにかしなければと頭の隅で考えながら帰路を歩く。大人しくついてくる影山はさながら鳥のヒナのようで、こんな大柄な男を、俺はまた可愛いな、とこっそり思った。

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150427