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闇マリクと
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「メシはまだかい? 腹が減っていけないねえ」

「うっさい。もう少し待ってろってば」

「待ち遠しいよ……」

 腹が減ったから昼飯を作ってくれと頼まれたのが丁度今から30分ほど前だったか。一人暮らしをしている俺は普段から料理をしているし要領も心得ているためまだいいかもしれないが、しかしそれでも2人分の食事を用意するというのは案外面倒なんだなと、フライパンを揺すりながらそんなことを思う。まず材料が倍になる。しかもマリクは俺と同じく成長期の男で、更には俺よりも体がデカいのでそれなりの量を食うし、手伝わないくせにアレは嫌いだコレは苦いだと要求ばかりが多いので本当に困ったものだ。前に一度作ってやった炒飯を気に入ってしまったらしい彼は他にもスープだとか卵焼きだとか、とても食べさせてもらう側の人間とは思えないようなワガママばかり言っていた。俺はお母さんか。

「よし、出来た。そっちに置いてある皿を取ってくれ」

「ん……」

 棚から引っ張り出しステンレス台の上に置いておいた皿を指してマリクへ声をかける。俺の隣でフライパンの中を見つめていた彼は、答えることもせずしばらく口をつぐみ黙りこくったあと、まるでさっきの言葉を聞いていなかったような顔で俺の背中に抱き付いてきた。ギョッとして振りほどこうとしたがこいつは結構力が強く、狭いキッチンではそれは難しいことだった。逞しい、しっかりと筋肉がついているものの、肉の薄い痩せた褐色の腕が腰に回る。文句を言うため俺が口を開くより早く、マリクはその腕に力を込めてきつく抱き締めてきやがった。

「……おーいマリク? 俺の話聞いてたか?」

「もちろんだよ……皿を取れっていうんだろう?」

「その通り。早くしてほしいんだけど」

「はいはい……今取るぜぇ」

 ひとしきり人の身体にべたべた触ったあとようやく気が済んだのかマリクが離れていく。犬ではないが、最近ようやく上手に"取ってこい"が出来るようになった彼は、指示された通り台の上に放置された皿を手渡した。白い無地の皿へと食事を移し、テーブルにそれらを並べていく。その間もマリクはやたらべたべたべたべたと俺の背中や肩や腕を触りまくる。一体何のつもりかと振り返って、まるで素知らぬ顔をしながら腰に腕を回す男にため息をついて見せた。

「マリク、さっきからどうした?」

 じっと俺を見つめていたそいつはやがて椅子に座り用意した食事に手を付ける。こいつはお箸を使えないので子供のようにスプーンを使って貪っていた。外人なので仕方ないとは思うものの、それにしたって口の周りが汚れても気にしないスタイルはもう少し配慮してもよさそうである。口いっぱいに米を含んだ彼がもぐもぐと口を動かしながら上目遣いに俺を見る。目付きが悪いのでちょっと怖い。

「……体、柔らかくないねぇ」

「いや……そりゃ当然だろ。男だし」

 何を今更、だ。もしや俺の体に柔らかさを求めて先ほどから触っていたとでもいうのだろうか。女の子と違い骨と筋肉ばかりの男など抱き締めたって心地よくないのは当たり前だし、それをいうならマリクの体だってかなり抱き心地は悪い。文句を言うなよとため息をつくと、マリクが「ああ」と呟いた。

「だが俺は好きだぜぇ」

 普段通りのゆったりとした喋り方でマリクがそんなことを続ける。炒飯を口へ運ぶ手は止まらず動き続けていたが、俺は俯いて「バーカ」なんて軽口を返す他ない。こいつは本当に厄介な、全く子供のような男だった。

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