×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


タイムスリップ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

※エジプト
※盗賊王

 砂漠のど真ん中を僅かばかりの水が流れる川でアサトを見付けてから、早いもので5度目の夜がきた。1人では何も出来ない、いやオレ様と2人でもろくなことなど出来やしないこの子供は盗みをするにしても大暴れするにしても足を引っ張るばかりだったが、恐ろしくもそんなアサトに慣れてしまった適応能力の高いオレ様は、無意識のうちにこいつの頭を撫でるまで至っている。これは重大な問題だ。
 砂漠の夜は寒い。皮膚を焼き空気と砂を熱する太陽が沈めばそこは昼間とはまるで違う。照りつける太陽を逃れるための薄い上着のまま過ごせば間違いなく凍死は免れない。大袈裟でなくそれほど寒い夜の砂漠の中、少しでも体温を維持しようと厚手の布を折っただけのような服で身をくるみ、そしてオレ様はその中でアサトを抱え込んでいた。今は微睡みの中を漂っているのかぴくりと目蓋を震わせて、強引に現実へと引き戻したであろう寒さに薄く目を開く。オレ様とは違い暗い色をした髪を撫でてやると、そいつは目を細めてふふ、と息を漏らした。

「寒いかよ?」

 無駄な体力を消費したくないので小声で問うと、アサトはしばらく口ごもったのち首を横へ振る。気を遣ったつもりなのだろうが体温の高いこいつを抱き抱えるオレ様が寒いくらいなのでこいつも同じはずだ。岩に背を預けたオレ様の膝上に座らせた小さな体が身じろいで胸に頬を押し当てる。大分暖まっているそいつの顔はやはり十分な熱を持っていて、それにあやかるつもりで少年の肩口に顔を埋めた。

「バクラ、くすぐったい」

「うっせぇ黙ってろ」

 笑い続けるアサトを黙らせるため小さな唇にオレ様のそれを押し付けた。砂漠の砂と乾燥とですっかり乾ききっている唇を舌で拭うと細い肩がひくりと跳ねる。普通自分で舐めて湿らせそうなものだが、こいつはそこまで考えが至らなかったらしい。唇をなぞり、吸い上げ、柔らかく温かい感触を堪能する。口腔の奥で縮こまっていた舌を絡めると鼻から抜けたような甘い声が漏れ思わず興奮しそうになって、ゆっくり唇を離した。冷えた風が唾液に濡れた唇を撫で抜けていく。 ぽわんと惚けたような瞳で見上げるアサトが物足りなさそうに上着の裾を引いたので、オレ様はアサトの肩に顎を置いて笑った。すぐに不思議そうな視線が投げられするりと頬擦りされ、乾燥にパサつく髪に指を通しそこを撫でた。

「子供にはまだ早いぜ」

「バクラと変わらないよ」

「バカいえ、オレ様はもっと男前だっての」

 そんなつまらない話をするうちにアサトは眠りにつくのだろう。頬を膨らませ拗ねる少年の温かい体をより強く抱き締めるとそいつは苦しいよと呻いて、オレ様はオレ様で、はいはいと適当な返事を返して幅の狭い背中を2度叩いた。
 夜の砂漠の風は身を切り裂くように冷たいが、2人でくっついて寝れば暖かいと、そうオレ様に教えたのはアサトだったので、オレ様は既に浅く寝息を立てつつある子供の額に口付けを落とし目を瞑った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

前サイトより移動
(リクエスト)