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表遊戯と
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「あのね、遊戯、明日一緒に来てほしいんだ」

 麻人くんにしては珍しくゴニョゴニョしながら声をかけられて、僕は咄嗟にどうして? なんて聞いていた。これじゃ嫌がってるみたいに取られるかな、と不安になったが当の麻人くんは特に何も感じなかったらしく、しばらく逡巡したあとにヒソヒソと耳打ちする。僕は思わず笑ってしまって、それを誤魔化すようにわざとらしく真剣な顔をしながら、可愛いなぁなんて心の中で呟いて、それから分かったよと頷いた。

 そんなやり取りがあった翌日、僕は待ち合わせに指定された駅前へとやってきた。麻人くんはベンチに座って足をぷらぷらさせながら、僕を待っているのかしきりに携帯を確認している。子供みたいで可愛らしい様子をもう少し見ていたかったけどあまり待たせるのも可哀想だったので「麻人くん!」大きく手を振りながら声をかけると、僕を見付けた彼は顔を上げてぱっと笑った。

「ごめんね、待たせたよね」

「ううん! 来てくれてありがと、早く行こ!」

 立ち上がった麻人くんに袖を引かれる。何だか本当に弟みたいだ。ワクワクを隠そうともしないその横顔は無邪気そのもので本当に楽しげで、僕までドキドキしてきてしまった。
 海馬コーポレーションの玩具発表は盛大に行われることが多い。例えばイベントと称して安価で売却したり、例えばやたらと手の込んだ体験版や試作品を無料配布したりと、大手企業だからこそ出来る行いばかりだ。
 今日麻人くんに呼ばれたのもそんなイベントの1つだった。大型百貨店の1階を貸し切って行われる新作ゲームを使ったゲーム大会は参加資格は中学生までで、つまり、そういうこと。

「でもさ、僕たちが出たらまずいんじゃないかな?」

「大丈夫だよ俺たち小さいし! それにバレても社長に謝れば大丈夫!」

 変なところで肝が据わっている彼の発言に、コネってやつは重要だなぁなんて思っていると、ふと、もう1人の僕の気配がした。僕の手が思わず胸元のパズルに触れる。

『なんだ相棒、不安なら俺が出ようか?』

 もう、もう1人の僕が出たら簡単に優勝しちゃうじゃないか。それにキミは雰囲気があるから、年齢バレちゃうよ!

『ああ、それはそうかもな。フフ、それに相棒の邪魔にもなってしまうから、俺は黙ってるぜ』

 ああもう……からかわないでってば!

「遊戯? ほら、行こ!」

 くん、と手を引かれて少し驚いた。僕が麻人くんに気を取られている間に、からかうだけからかったもう1人の僕はソソクサと心の部屋に戻ったみたいだ。暖かい手から何かを渡されて目をやると、僕の受付まで済ませてしまったらしく参加者用のバッチがあった。

「遊戯、参加するからには優勝だよ! 一緒に頑張ろう!」

「……うん!」

 きゅっと手を握り返して強く頷く。初めて見る道具とルールでどこまで出来るかは分からないけど、それでも優勝を目指すと、麻人くんに言われたらやるしかない。2人1組のペアを組んだ僕たちは巨大なモニターに映ったトーナメント表を見上げて、それから指定されたテーブルに着いた。

 その後、海馬くんにはバレてしまった。

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