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十代×同室(弘樹)
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 午前最後の授業が終わると、アカデミアも騒々しく昼休みに入る。寮の食堂で食べる者や頼んでおいた、もしくは自分で用意した弁当を広げ友人たちと談笑しながら箸を進める者もいるが、今日も十代に手を引かれる俺は購買で昼食を購入する者の1人だ。休み時間より更に賑わう購買は人がごった返しているため俺のような小心者は前に進むのも一苦労なのだが、しかし十代は「あ、わりぃ!」「入れてくれよ!」ケラケラと愛くるしく笑いながら人混みを掻き分ける。手を握られている俺は半ば引きずられるようにしながらそれに続く。

「お、十代。それに弘樹も……弘樹、顔が青いが大丈夫か?」

「よっ、三沢!」

「うん、平気、いつもだし。……珍しいね、大地くんが購買にいるなんて」

 男子生徒の多い中比較的小柄な俺は人に押し潰されながらも応答する。目当てのカードパックとドローパンを持つ大地くんに問い掛けると、彼は苦笑混じりに弁当を忘れてたついでにな、と答えた。

「弘樹なに食いたい?」

「え? あ、わっ、何でもいいよ!」

 ぐっと手を引かれて傾いた上体を十代の腕が支えてくれて、動揺した俺は思わずそう返していた。「妬くなよ十代」とか「ラブラブカップルめ」とか「弘樹に弁当作ってもらえよ」とか、大地くんを皮切りに周りの同級生やら上級生やらがやたらと囃し立てる。慣れたとはいえ流石に恥ずかしくなった俺は熱くなった顔を伏せて、笑いながらそれもいーかもなーなんて返す十代が早くカードとドローパンを選んでくれるのを待っていた。

 結局俺はカードは買うことなく、背中にかけられる冷やかしから逃げるようにドローパンを一個買ったきりに終わった。十代のお気に入りになっている人気のない崖の上に着く頃にはもうクタクタで、パンを持ったまま思わずしゃがみ込んでしまう。

「なんだよ弘樹、元気ないな。転入のときにはあんな大勢の前で、俺をくれってクロノス先生に言ってたのにさ」

「うぅ……だからそれは必死すぎてパニックになってたんだって言ってるだろ……」

 正気でそんな恥ずかしすぎること出来るわけないのに、十代はからかうように喋りかける。あのときは本当に必死だった。転入生はオシリスレッド寮配属と聞いて安心していたのにまさかのラーイエローの名前が出たのだ。混乱して、それでも十代と同じ寮に入りたくて、ほとんど何も考えずに頭を下げていたのだから中々自分もやれば出来ると感心すらした。
 細い見た目のわりに量を食べる十代は3つ買ったうちの1つを開けて、俺の横に座り込んでからパンを確認する。

「おっ。豆腐パンか!」

「あ、いいな……俺なにパンだろ」

 パンからはみ出した……というより若干破裂しがちの豆腐パンを見たあと俺もドローパンを開ける。ガサガサと鳴る袋から取り出したパンは甘い香りを放っていて、見る前にショコラパンということが分かった。 他愛ない会話をしながら俺は甘いショコラパンを、十代は2つ目で出た盛りそばパンを噛る。
 ホルダーから出したデッキを2人で確認しながらの昼食は幸せだ。カードを覗くために首筋に顔を寄せる十代に、顔が赤くなってしまうのは仕方がないことだろう。

「弘樹のデッキって魔法多いしさ、バトルフェイズ潰すようなカード入れた方がいいんじゃないか?」

 顔のすぐ横で十代の声がして、それがまたこの距離感を理解させるようで恥ずかしい。そうだよね、と返す俺の心臓は喜びと緊張でドクドク鳴りっぱなしで、体温が上がったためか手に持つショコラパンはコーティングのチョコが溶けはじめていた。十代は最後のパンを開けて、当然のように出てきた黄金の玉子パンを見ると嬉しそうにラッキー! と叫んで笑う。俺はまだ彼がこのラッキーなパンを引き当てなかったところを見たことがなかったので、とりあえずはいつものように「ホントだ、さすが十代!」と、そう返した。
 もぐもぐもごもご口を動かしどんどん咀嚼する十代と反対に、俺は一向に食事が終わらない。わりとよく噛んで味わう俺は少食な方だがなにぶん食べ終わるのが遅い。しかもそこまで甘いものが好きなわけでも、しかし嫌いなわけでもなく、ただ少ししつこい感じもするこのショコラパンが相手では、それは余計に時間がかかった。俺に分けてくれた黄金の玉子パンの一口以外全て完食した十代が手で乱暴に口を拭い、膨れた口の中に詰められたラッキーなパンを飲み込みながら自分のデッキを広げて見せる。

「ほあ、おえおけっおーよきょあーおいええうえ?」

 何を言ってるか分からないが彼の巧みな指捌きで広げられるカードの中には、確かに彼の言う通り効果カードが盛り込まれている。記憶の中の自分のデッキと照らし合わせながら最後の一口となったショコラパンを口に収め頷いていると、あっと声を上げた十代の手が俺の手首を握り締めた。

「ど……どうかした?」

 怯みながらも手首を押さえる温かい手に意識が行ってしまう。十代はようやくパンを飲み込んだらしくへへっと可愛く笑って、それから何の躊躇もなく俺の、チョコのベッタリ付いた指を口に含んだ。驚いて手を引こうとしたがそれは簡単に防がれて、逆により強い力で握り締められる。

「ちょ、十代……!」

「んー、あまい」

「それはそうだよ、チョコだし……っ」

 ぺろりと舌が皮膚をなぞって、爪と指の間を行き来する。やんわりと歯で噛みちゅっと吸いながらしゃぶられると背中がぞくっとして、それを誤魔化すために肩を縮こませ目を伏せた。それなのに十代はクスクス笑って、仕方なく俺は目を開ける。

「今の弘樹の顔、すげーエロい」

「なんだよ、それ……」

「気持ちよさそうってこと」

「うぅ……」

 歯と舌で扱かれるようにされると羞恥で息をするのも辛くって、早くこの戯れが終わることを祈った。十代はもうチョコなんて付いていない指をしばらくじっくり舐めたあと、唾液でぬめる指に吸い付いた唇を笑みに歪め、見せ付けるようにゆっくりとそれを引き抜く。軽く歯形がついた指から唾液が糸を引いて地面に落ちる様はどうにも卑猥で見ていられなかった。

「なぁ弘樹、まだチョコついてるぜ」

「……え?」

 知らないうちに切れていた呼吸を整えながらも惚けた声を漏らしてしまう自分が恨めしい。十代の言葉に自分の手を確認したがチョコなどもうついているはずがなかった。てらてらと唾液で光る指を見つめていると十代が楽しそうに再び笑って、それから俺の左肩に手を添えて身を寄せる。

「じゅ、だい……じ、自分でふくから……」

「だーめ。俺が綺麗にしてやるよ」

「で、でも俺、もうホントに……っ」

「知ってるって、勃ってるんだろ? あとでちゃんと抜いてやるから大丈夫だって。ほら、どうして欲しいか言ってみろよ」

 なんて意地悪なんだろう。決して俺を辱めることを忘れない彼は絶対に俺が拒否しないと分かり切った目で俺を見下ろしている。やんわり下腹を撫でる手に息を漏らした俺は震える手で十代の服の裾を掴んで、それからきつく目をつぶり「……なめて」と囁いた。

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