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十代×同室(弘樹)
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「玄米、ほうれん草のお浸し、焼き魚、そしてアサリの味噌汁か……今日も質素だな……」

 食堂の机に並ぶ一人分の朝食は今日も昔の農民のようなメニューだ。オベリスクやラーの寮ではもっと豪華な食事だっていうのに、相変わらずオシリスの待遇は悪い。

「いただきます! ……十代、早く食べないと冷めるぞ?」

「おぉ……弘樹、よく不満言わないよなぁ。俺なんて未だにこの差別っぷりは気に入らないのにさ」

 この貧相な食事もそうだけど、他の行事でも弘樹が文句を言うところは見たことがない。俺ですら入学当日にはこの食事メニューに不満ばっかだったのに、だ。

「うん? ……まぁ他の寮生の話を聞くと不満が全くないわけじゃないけど……」

 器用に箸で魚の骨を外す弘樹が顔を上げる。綺麗な顔とお姫様みたいな雰囲気に、焼かれただけの魚と箸は全然似合わない。

「……でも、人が作ってくれたからね。何でも残さず綺麗に頂くのが、俺たち食べる側の示せる敬意だよ」

「そっか……うん、そうだよな」

 確かに弘樹の言う通りだ。他の寮と比較するから味気なく感じるだけで、料理をしないのに食事が出されるということは既に優遇されているのかも知れない。俺も気を取り直して魚の骨を外し身を頬張った。ちょっぴり薄味だけど、身はホカホカでうまい。

「それにさ、確かに品数は少ないけど、味はいいから。俺は満足かな」

「へー……弘樹って薄味派?」

「うん、多分。でも濃い味付けも好きだよ。十代は濃い味派でしょ?」

「アタリ! やっぱご飯が進むようなのがいいなー、どんぶりメシ的な!」

「あ、それは分かる! 丼物は味が濃い方がいいね!」

「つーか弘樹がどんぶりとか似合わねー! ナイフとフォークのイメージだろ!」

「え、そうかな? 牛丼とか好きだけど」

「いいなー! 食いてー!」

 やっぱ三大欲ってのは偉大なもので、育ち盛りの俺は食い物の話をすればするほど腹が減る気がする。魚にかぶり付きご飯を掻き込む俺と違って上品な弘樹は綺麗な箸使いでほうれん草を口に運んだ。汁が垂れないようにちょっとシワが寄る眉間とか、飲み込んだあとに唇を僅かに舐める舌とか、なんとなくエロい。

「十代? お腹いっぱい?」

「え……あ、ま、まさか! 軽く30杯はイけるって!」

 急激に現実に戻されて咄嗟にそんなことを言う。30回は流石に無理かもしれないが、弘樹が積極的にオカズになってくれるなら10回はイけそうだ。そんな下ネタを考えているとは露ほどにも思っていないだろう弘樹は「そんなに食べたらお腹壊すよ」なんて笑っているから可愛くてたまらなかった。全く無邪気な恋人は最後に味噌汁を口に含んで、それからコクリと飲み下した。結局ご飯と味噌汁をおかわりした俺も全部平らげてから箸を置いた。

「あー、食った食った! でもあんま食うと授業だるくなっちまうよなぁ」

「はは、十代はいつも寝てるけどね」

「あっ、ひでー!」

 椅子を引いて立ち上がって笑う。時計を見れば授業の時間が迫っていて考えただけで憂鬱だなーと思っていたとき、不意に右手を捉まれた。振り返ると弘樹が俺の手を掴んでいて、目があうとふんわりと微笑んだ。あ、可愛い。

「十代、ご飯粒ついてるよ」

「え、」

 マジ、と聞く前に伸ばされた手が俺の頬に触れる。温かい手は目的を持って肌を撫で、そしてすぐに離れていった。ご飯粒を摘んだ指はそのまま弘樹の唇に吸い寄せられ、何の躊躇も疑問もないような素振りでその口の中へと収まった。

「オッケー。あ、そういえば最初の授業って、」

「弘樹」

「え、なに?」

「そういう不意討ちやめてくれ……」

 多分俺の顔は真っ赤で、気付いてない弘樹は困惑した目で俺の顔を覗き込んだ。愛されてるのが嬉しくて恥ずかしくて、どうしようもないくらいに胸が高まる。
 とりあえず、今日の授業は生きていけそうだった。

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