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クロウ×ショタ(十夜)
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 ブラックバードは俺の愛すべき相棒だ。かつてダイダロスブリッジから大空へと駆けた英雄に憧れて付属した双翼は俺の誇りであり自慢であったし、俺も彼のようにと、勝手に伝説の男の意志を継いだ気になっているのも事実だ。
 自分でも呆れるほどのロマンチストという自覚はあったが、それでも凄いとかカッコいいとか言われると調子に乗ってしまうわけで。

「わああああ! 凄い! 速いはやあぁぁい!!」

 テンションがうなぎ登りに上昇していく十夜の絶叫を背に、俺はブラックバードの車体を鋭角に傾けコーナーを曲がった。本来ならばもっと速度を上げて飛ばすが十夜がいるため比較的安全運転だ。コーナーのあとジャンク品のタイヤやスクラップとなった車が乱雑に放置された直線で少し速度を上げていく。安全運転とはいえ、すぐ脇に人が立っていてもスロットルをフルで回す鬼柳に比べてなのでやや自信はないのだが、それでもこの道ならば問題はないだろう。
 走り慣れたサテライトの通りで更にエンジンの回転数を上げながら目的地へとブラックバードを駆り立てる。メットを被り俺の背中にしがみつく十夜はまるで子供向けアトラクションにでも乗っているかのような、非常に楽しそうな笑い声をあげていた。

「ほらよ十夜、到着だ!」

 ブレーキをかけながら足で地面を削り相棒を減速させる。ガガガガ、とブーツの踵が、風化してボロくなったアスファルトを巻き上げた。後ろでごそごそ動く気配が伝わって、オレンジと黒の車体から降りた俺は十夜の頭に乗ったメットを取ってやった。頭が重かったのか首を左右に振る姿に思わず笑うと彼もにっこり笑みを浮かべ、伸ばされた両腕を俺の首に回させて、体を抱き上げる。

「よっと……お、前より重くなったか? 十夜はちいせえからな、もっと一杯食わないと大きくなれねーぞ!」

「食べてるよ! クロウは一杯食べても大きくならないよね!」

「ほっとけ!」

 ブラックバードのエンジンを止め十夜を降ろそうとしたが、それを察したのか回された腕にぎゅうと力が込められたので思わず笑った。賢明にしがみつき甘えまくる様子に仕方ねえなと呟きながらも可愛いとか嬉しいとか思う俺も俺なので、まだ重量を感じさせない体を一度抱き上げ直す。するとくすくす笑った十夜の頬がぺたりと俺の顔に寄せられ「おいおい、甘えすぎだぜ?」心の籠ってない文句を言いながら、柔らかい髪を撫でた。

 マーサが十夜のことを気にかけているのはチームサティスファクションなら誰もが知っていることなので、ちょっとした健康診断も兼ねて、こうして時折俺か遊星がこの孤児院に顔を見せにくる。何だかんだで色々土産を持たせて貰ったり、同年代(精神と肉体的なものだ。実際の十夜の年は俺たちとそう変わらない)と遊べるので本人も気に入っているらしい。
 今日もたくさん食べろって言われるのかなぁと、常日頃から様々な面々に耳が痛くなるほど言われている十夜が呟く。いい加減言われ飽きたと言わんばかりのしょんぼりした顔に俺は苦笑いを浮かべながら、いつまでも華奢な背中を何度か手で叩いた。

「落ち込むなって。十夜はちゃーんと言うこと聞いてるいい子だって、マーサに説明してやるからよ!」

「……ほんとに?」

「ああ! だからそんな顔して、マーサたちに心配かけさせたらダメだぜ? いつもみたいに一緒に笑う。十夜はいい子だから、出来るな?」

 至近距離で見詰めた顔は幼いが、それでも少年は小さな唇を持ち上げ大きく頷いた。

「……クロウが言うなら、がんばる」

「ん。偉いな」

 わしわしと頭を撫でられ気をよくした十夜が再びぎゅっと、きつく俺を抱き締めた。細い髪が覆う額に唇を押し付けると照れたようにはにかんで、そのお返しというように少年の唇が俺の頬に接触した。ちゅっと可愛らしい音をたてながら当たるそれを感じながら笑っているとその顔が離れて、しかしそのすぐあとに目の前へ彼の顔が動く。唇に触れるむにっとした感触。硬直したままの俺を置いてけぼりに何度もそれが繰り返された。軽いリップ音とともに繰り返されるそれはキスというにはあまりにお粗末なものではあったが、全身全霊で甘えと感謝を体現する十夜に笑みを返して、俺はマーサハウスのドアを開けるのだった。

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