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ジャック×ショタ(十夜)
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 十夜は先ほどからじっとテレビを見つめていた。面白い番組が放送されているわけでもないのに余程暇なのか、俺の腕に頭を預けたまま身動ぎもしない。ふいと顔を覗き込むと少年は驚いたように目を見開いて、それからいつものように明るく顔を綻ばせた。

「……出掛けたいのか?」

 ひくりと華奢な肩が震える。どうやら図星のようだ。
 十夜は俺の名と共に顔が知られているため、まず滅多に外出しない。もちろんそれは俺も同じなのだが、頻繁にデュエルをする俺と違い彼には趣味などがないので、まあつまり暇なのだろう。

「出掛けるか?」

 もしここで十夜が笑顔で頷いていたならば、施設や店舗を貸し切りにしてこいつを甘やかすつもりだったのは否めない。俺はキングであり、キングたる者、愛するときは常に全力投球である。……人目のない場合に限るが。
 出掛けるとすればどこに行きたいのだろう。十夜はまだまだ子供のため遊園地なんてものが無難だろうが、サテライトでは見ることの出来ない綺麗な水中を自由自在に移動する魚ども、つまり水族館でもいいかもしれない。いや水族館はマイナーか、ならば動物園。イメージ的にもピッタリである。
 黙々と計画を練っていた俺に、しかし十夜はううん、と首を振ってみせた。怪訝として理由を問う前に、少年の、俺よりも一回りも二回りも小さな手が腕に絡み付く。

「だってジャックのこと、みんな知ってるだろ? みんなのキング、ジャック・アトラスもカッコいいけどさ、でも俺は……」

 ぎゅっと腕に力が込められる。なるほど、これは嫉妬だな。随分可愛い真似をするではないか十夜め。「俺はジャックと2人でいたいなぁ」と、まるで恥ずかしがりもせず甘えてくる様子に思わず頬が緩みそうになったがそれはキングの威厳を持って阻止した。
 部屋のドアに鍵が掛かっているのを横目に確認して、十夜の軽い体を抱き上げる。もう少し脂肪か筋肉、あるいはその両方をつけるべきなのだが、無理に物を食わせることも出来ないのでもどかしい。シェフに頼んで、普段軽く済ませる昼食を幾らか高カロリーな食事に変えさせてもいいかもしれない。

「ジャック、ちゅー」

「なっ……」

「だめ?」

 突然手を伸ばしキスをねだられどきりとする。ちゅー……だと……!? 動揺で目が泳ぐのを目蓋を閉じることで阻止した。駄目なわけがない、むしろいいくらいだ。だがこんな日の高いうちからキスをしてしまって、果たして俺は留まることが出来るだろうか。
 十夜は1人では何も出来ないただの子供だが、ただひたすらに、愛しい存在だった。いくら俺の精神がキングに相応しい強固なものであっても、基本的に、そんな愛しい十夜には弱いのである。

「じゃあっくー」

 膝の上に体を乗せて、俺の胸に小さな頭が乗った。応えない俺に拗ねたのか拒否されたと思ったのか、これ見よがしに頬を膨らませている。端から見ればただの阿呆だが、こうして目の当たりにすれば可愛いと思ってしまうのだからほとほと参ってしまう。

「……煽るつもりならば、責任を取れよ」

 一応そう断ってから少年の顎を掴み口付けた。あおるって何だろうと思っているであろう瞳はパチリと開いていたが、舌を滑り込ませてやると途端にきつく閉じられた。体温よりも暖かい口腔を舐めると子供の喉からは擦れた吐息が溢れて、慌てたように俺の腕に手をかける。

「んっゃ、ちが……」

「フン、触れるだけのキスはキスとは言わんからな」

 口付けの合間にそう告げる。まだ何か言いたそうに俺の胸を軽く叩く十夜はよそに、華奢な背中から下へと手を滑らせてやると、彼はまるで誘うように甘い声を漏らしたのだった。

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