He became a woman.55.
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電気を消してベッドに横たわり寝る体勢も整えてさあ寝るぞ、というとき、隣に寝転ぶ消太くんが、不意にもぞもぞと動き出した。どうしたのかと振り向けば黒い瞳と目が合って、僕は不思議に思い瞬きを繰り返す。今仰向けになったばかりの彼は何故か体を横にし、ジッと僕を見つめているようだった。「どうかした?」と聞いてみると、彼は「別に。なんでもねえよ」と短い返答を投げてくる。何でもないと言うわりに何か言いたげな表情だ。ははあと察した僕もまた消太くんの方へ向き直り、ヒゲの生えた、ちょっぴり小汚い雰囲気の恋人に笑いかけた。
「あ、わかった。消太くん、眠くないんでしょ」
「ちげーよバカ」
バカと言われてしまった。てっきり眠たくないのにベッドに入ったから、子供みたいに暇を持て余しているのかと思ったのだがどうやらそれは違うらしい。何も言わずにこちらを凝視する恋人の手が、掛け布団の下で僕の手に触れた。温かい手は僕より少し大きくて、筋肉と骨でゴツゴツしてる。短く切り揃えられた人差し指の先が僕の手の甲をくすぐるみたいにチョンと撫でてきて、なるほど僕は、彼は甘えたいのかと合点がいった。僕の可愛い恋人は外でこそクールで冷静な頼りがいのある男性だけれども、家に一歩足を踏み入れるととにかくベタベタに甘えたがる人なのだ。眠くないのではなく、恐らく、まだ寝たくないのだろう。僕に甘えて、触って、たくさんキスをして、それから1日を終わりにしたいのだ。
控えめな申し出が愛おしく、僕は彼の手を握った。指先を包み、それから指を絡ませ手を繋ぐ。元々すぐ隣に寝ていたけれど、腰が密着するほどの位置に距離を詰め、間近に見える気だるげなドライアイを覗き込んだ。
「ね、ショータくん。チューしてもいい?」
一応そう問いかけると、彼は頬を緩ませ「まあ、いいよ」なんて曖昧な言葉を返してくる。本当はキスしたいくせに消太くんは素直じゃないのだ。そんなところも可愛くて、僕は彼の唇に自分の唇を押しつける。少しだけ厚いぽってりとした下唇をもぐもぐ食んで、頬や鼻先にもキスしてみる。クツクツと笑う消太くんは楽しそうだ。やっぱり甘えたかったらしい。
「ソーガは可愛いね」
「あはは、ありがとう。消太くんはカッコいいよ」
「ありがとう」
短いやり取りの合間に僕たちはまたキスをする。チュッと音を立てて唇を吸うと今度は彼も同じようにキスしてくれて、もう一度キスを返すと、消太くんが繋いだ手をギュッと握り締めた。セックスのときにするいやらしくて濃厚なキスも好きだけれど、こうやって彼の愛情を注いでもらえるキスも幸せで大好きだ。再びもぞもぞと動き出した消太くんが身を屈め、僕の首筋に頭を押しつけた。消太くん、猫みたいだ。くしゃくしゃの髪に頬をあてる僕に、彼は「このまま寝ていいか」と可愛いことを聞くものだから、僕はだらしない顔でニヤけながら「いいよ。おやすみ、消太くん」と返すのだ。
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170426
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