もったいないからもらってあげる


何か良いものでも見付けたのか知らないけど、やけに上機嫌に七海が話し掛けて来た。
この間七海がお昼に持って来た点心がまあまあで、何故か冥加までもが黙々と食べていてひどく驚いたのを思い出す。それを氷渡にも渡していたらしい。放課後お礼を言う珍しい光景を見た。

甘さは控え目ではあったけど、お茶と一緒でなければ僕は遠慮したいなと思った程度で、冥加がああいうものを気に入るのは意外過ぎた。
僅かにフルーツの味が盛り込まれていたのがそんなに良かったのか。食べないとは言ってない、何て言うから冥加の妹がひどくにこにこと嬉しそうに笑っていた。七海とは話が合うらしく一緒に居るのを良く見掛ける。冥加が目くじら立てないと良いけど。色々面倒臭そうだから。

「これ、新しく出てたやつ何ですけど、天宮さん、こういうの好きかと思って」

何時だったか、前に非常に甘ったるいマンゴージュースを一口勧められた時はあまりの砂糖の量に堪え切れずに噎せて終った。大体、元々甘い果物にどうして砂糖迄加えなければならないのか。嫌がらせにも思えて来る。
マンゴーはマンゴーだけで十分なのに。

「あ、あの、これはそんなに甘くないから、大丈夫です」

僕が閉口して終ったのを覚えているらしい。慌てて七海が付け加える。あの後近くのコンビニで同じものを見つけて、冥加に押し付けてみた。小日向さんからだよと言ったら受け取るものだから可笑しい。きっとあの甘さには冥加も堪えられなかったに違いない。

「じゃあ、ひとくちだけ」
「え、これが天宮さんの…って、天宮さん!?」
「煩いよ、七海」

自分に合わなかったら開けていない方を貰っても飲み切れないし、捨てるのも勿体ない。
七海の飲みかけに口を付けたら、普段慌てふためくよりも倉皇としていてひどく面白い。

「これは確かに悪くないね。ありがとう、貰うよ」
「は、はい、どうぞ………びっくり、した」

これくらいで驚かれるとは思わなかった。星奏の1年生は堅いからないとしても、至誠館の1年くらいはこういう事、していそうなものだけど。
残りに口を付けようとして、七海はひどく戸惑っていた。拭くのは失礼な気がするし、だからと言って、なんてぼそぼそ話す声が聞こえる。ああ、全く、あの時、僕には逃げるななんて言って退けたというのに。あれには僕も冥加も舌を巻いたものだ。舞台を降りた今も、結構変わって来たと思っていたのだけど。

「要らないなら、勿体ないから貰って行くけど」
「え、あ、の、飲みます」

何時になったら飲むのか見て居たら七海は困ったような表情を向けて来る。

「飲まないの?」
「天宮さんは時々、すごく意地悪だと思います…って、すいません、オレ…」
「七海の困った顔見るの、面白いからね」
「…謝るんじゃなかったな…」

七海には謝り癖でも付いているらしい。意地が悪い、何て別に大した悪口でもなんでもないのに。それでも、思った通りに言えるようになった七海は少しは成長しているのかな。
揶揄って詰まらない人間には何かしようなんて思わないから、特定の人間に対してだけ。特に冥加と七海はやっぱり面白い。

今度は、間接じゃない、本当に触れてみようか。きっと、期待を裏切らない反応を返してくれるに違いないから。
そうだ、言い訳にはマンゴーを用意しよう。












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22.3.28.村棋沙仁



相変わらずいみがわからない。
でもちょっとはびーえるになって来た、かな。
なんだかあまみやがわからなくなってきました\(^o^)/
ちょっとメモリアルブック買ってきますε=ε=┏( ・_・)┛









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