六日目

泣いて泣いて、泣いて…。

疲れて眠った。

目を覚ますと辺りは暗く、月明かりが窓から差し込んでいた。

見渡せば赤黒い死体。

とっさに空深を探すがいない。

一日中走り回った体はまだ回復していなくて、再び睡魔が襲ってきた。

次に目が覚めたのは、朝日が昇ってからだった。

死体からは僅かに腐乱臭がした。

オレは至極冷静にまず死体を片付ける必要があると考え、午前中に死体を処分した。

その後は汚れた教会を掃除することにした。
空深がいたときと同じ手順で、同じ道具で同じ場所を掃除することにした。
床を磨く度、赤く濁った水が床を滑っていった。  
掃除が終わると庭の植物に水をやった。

独りで食事をした。
空深がいたときと同じ料理。
空深がしていたように手を合わせ祈る。
それは神への食物の感謝ではなく、もう一度空深に逢わせてくれと言う願いだった。

本当は空深の部屋を物色したかったけど、そしたら空深がいないことを肯定するようで、止めた。

一人じゃ、広すぎる教会に、彼はずっと一人でいた。

寂しかったのかな、怖かったのかな、それとも…

あの人は自分が罪人だと言った。

そんなわけ無い、とは思わない。

あの人も悪人だった時期があって、何かしてたんだって事位おれにも分かった。

ぼーっと空深について考えていたら夕食の時間になった。

質素な夕食。

じゃがいもを蒸して潰したものにバターを少し入れたマッシュポテト。
種なしパン。
トウモロコシのポタージュ。
そしてワイン。

空深が振る舞ったものと同じ。

それを食べながらおれは思い出していた。

おれが堪らなく空深を大好きになって飛びついたときに少し驚いてからおれのことを気に入っているといってくれたこと。

出会って少ししか経っていないけど、空深のことを考えるとポカポカして温かくて、安心する。

空深の側は安心する、だから大好き。

そういう意味だった。
 
言ってから少し後悔した。
元来言葉数が少ないからちょっとホモっ気に満ちた。

それでも、気に入っているといってくれた。

嬉かった。

また、二人で逢いたいな。
一緒に掃除して花に水をやってご飯食べて。
散歩もしたい。

「…かえってきてよ。」

だから待ってるから、かえってきてよ。

おれ、何時までも此処で待ってるから。

「かえってきてよ。空深さん。」





|