「…どこだ、ここ。」

果てしなく広がる草原に四月一日は立っていた。

暫く歩くが、一向に人間が見えない。

装備は戦闘用装備のまま、珍しく腕にまで義肢がついている。

四月一日はその場に座り、腕を組んでコレまでの出来事を思い出した。

「…んー、あ、そーだ。」

そうだ、今日は貧乏籤を引いてどっかの国の鎮圧作戦に参加していたのだ。







またもや反乱を起こした西の果ての植民地。

その鎮圧任務を任命されたのは特攻隊神風。
神風と言えば世界最強の名を欲しいままにする國津神の攻撃部隊である。
その世界最強の攻撃部隊を統べるのは四月一日 椿(わたぬき つばき)大尉。

内地までの直行便である軍用機で目的地に着いたのが今日の明け方。
夏のこの時期太陽が南東にあることを考えると2、3時間前ということになるか。
元々現地の統括に当たっていて、反乱軍に国境ギリギリまで追い詰められた寂しい簡易基地。

つくづく貧乏籤を引いたのだと思った。

この程度でわざわざ神風がでる必要などないのだ。
しかし今期は神風の直属の上司、月夜少将のそのまた上の坂本将軍が国の覇権の一部を握り続けられるかの審議が成されるため、出来るだけ大きな成果を見せておく必要があるのだ。

そんなことをグダグダ考えるのは四月一日らしくない。
何時もどおり楽しく戦えばそれでよいのだ。
だがしかし、人の第六感とかいうものなのたろうか、何かある気がする。
そう、これは″予感″。

あまりよくない″予感″がする。

四月一日は戦闘用の義手義足を左腕右足に取り付けながらぼんやりそんなことを考えていた。
義手義足は最新鋭のもので感覚まである。
痛覚のみを排除した戦闘用義肢。
神経に直接リンクしたとき特有のリアルな感覚を確認してから装備を整える。
何時もの太股までのブーツは義足にも着用。
背中に″國津神軍特攻隊神風″と刺繍された軍服。
勝手に切ってショートパンツにしたズボン。
手榴弾にサバイバルナイフに拳銃に小銃に…。
自らを守る防弾チョッキなんてものは身に付けない。
特攻隊は速さが売りだからだ。

与えられたテントの鏡を見ればいつも通りの自分。

「…大丈夫。」

すぐ終わる。

そう言い聞かせて潰れて醜く肌の引きつった左目に黒い包帯を巻く。

これでいい。
俺様はか弱い女の子じゃない。
俺様は強い。
何にも負けないスピードと銃がある。

テントの外から志気を高めるための軍歌が聞こえる。



刃を鍛え給えし神は奴僕を嘉し給わざりき。

故にこそ右に坐す方に剣をば賜いしか。

故にこそ怖じぬ勇気と自由に教え説く憤怒を賜いしか。

死するまでも粉骨砕身、断乎戦い抜けとの御心ぞ…



四月一日はふと蒼空を見上げた。

そこには雲一つない恐ろしいほど蒼い蒼空が広がっていた。

その美しさに久方振りの恐怖と興奮を覚えた。





ドガッ!!!!!

トドドドドドドドド!!!!!

「…ちっ…。」

多い…予測以上に敵が多い。

田舎の軍人はまともに敵の数すら報告できないのか。

苛立ちが積もる。

「牧野!オメェ右回りで主力挟め!
前後からぶっ潰す!」

「アイサー」

分隊長の一人に声をかける。
牧野は部下を連れてその場を去った。

銃弾が飛び交う中で何かが目の端に写った。

キラリと空に光るそれを四月一日は経験で目星をつけた。

「空軍まで完備、か。
こりゃ林檎先輩に報告だなぁ、」

戦闘機だった。

蒼空からの攻撃に注意しながら敵主力部隊とやり合うには戦力が、足りなさすぎる。

「本国に連絡、増援要請だ。
出来れば月夜上司連れてこい。」

敵を撃ち殺しながら叫んだ声を聞き取った部下の一人が本部代わりのテント群に走っていった。
四月一日が″先輩″と呼び尊敬する濃霧 林檎(のうむ りんご)准将とその直属の上司月夜 零弍(つくよみ れいじ)少将は現在、この戦場より少し離れたところで待機している。
直ぐに伝令が出せれば応援が見込める。

戦闘機はどうやらステルス。
この国にそんな財力も技術もない。

どこかの国と密約してやがる。

わかった情報をコンタクトレンズに入力していく。
薄いコンタクトレンズには考えるだけで様々な情報が映し出される。
便利なもんだ。
すると視界の端に濃霧からの通達が来ていた。
イメージが脳内に流れてくる。

すぐに向かいます。

その言葉に安心したその時、ステルス機の下から何か出てきた。

「…クソが…!?」

空対陸ミサイル。
地上の殲滅に使う、広範囲を一瞬で焼き尽くす殺人兵器だ。
今この場で使われれば自軍の壊滅は免れない。

四月一日はその背中に担いだ己とほぼ同じ大きさの武器、対飛行物用大型銃を構えて撃った。






「って、此処までしか覚えてねーよ。クソッタレ」

そう言いながら四月一日は現在食事の時間だ。
非常食のスティックバーをモグモグしている。

そう言えば今朝は食欲が無く、時間も無かったので朝食を抜いていたのだ。
腹が減って仕方がない。

というか、なんて曖昧なところまでしか記憶がないんだ。
どういうことだ、これは。

というかなんだ、此処は無線どころか、宇宙ともリアルタイムで通信可能な通信機器まで使えないだと。
舐めているのか。

「おいおい、なんだよクソ上司の変態月夜より舐めた存在がいたとはなぁ、初耳だぜ。」

さて、どうするかね。

コロンと横になった四月一日はしかし、直ぐに体を起こした。
微かに地面が振動している。
まるで戦車が戦地を走るように。
敵に見つかったか、と身構えたが違うようだ。
あのキャタピラ特有の振動ではない。
なにか、足音のような。

四月一日の腰ほどまである草に隠れながら周りを見渡す。
振動は迷うことなく此方に近づいている。

小銃(ライフル)を構えて草の向こうに目を配る。

「…なんじゃありゃ」

思わずそう言ってしまうような異様な光景が其処には広がっていた。 

四月一日の何倍もあるヒト型の何かが走ってくるのだ。
しかも全裸で。

その姿に変態と名高い月夜を思い出した四月一日は思わず叫んだ。

「オイコラ!変態月夜ぃ!てめぇとうとう露出狂にまで成り下がりやがったか!!!!!
恥を知れぇ!!!!!!!!!!」

「グォォォォォ!」

「…なんだ、人違いか。」

月夜は整った顔立ちと長い黒髪が特徴的であるが目の前の奴はお世辞にも整った顔立ちとはいえず、さらに髪も長くない。
だがその笑顔にはなぜか重なる物があった。

「…え、なに。アイツ俺様の事好きなのかな。」

全速力で此方に向かってきているのだ。
つくづく自分のまわりには変態が多いなぁと思いながらライフルの引き金を躊躇無く引いた。
躊躇無く、殺した。

「悪ぃなぁ、俺様、先輩から得体の知れねぇモンに関わんなっていわれてんだ。」

奴、巨人は突っ伏すようにその場に崩れた。

だが、またもや四月一日には信じられぬ事態が起こった。

「コイツ…再生しやがる。」

一瞬は驚きに染まった左目は直ぐ興味の色に染まった。

「…死ぬまで遊んでやるよ、」

ハニー。

そう呟いて手始めに眼球を潰した。
脳を抉りだした。
腹を割いて中身を出した。
中からヒトだったものが流れ出した。
黙祷を捧げた。
手足を切り落とした。
首を落とした。
それでも再生してくる。
しぶとい奴だ。
よし、次だ。
頭部の皮を剥がした。
その時誤って背中まで皮を剥いでしまった。
その後いくら待てども再生の兆しはない。

「頭部の皮か…?」

蒸発する様を動画としてコンタクトレンズに記録してまた寝転ぶ。
次は大量の足音で目が覚めた。

今度はキッチリ頭部の皮のみを剥ぐ。
再生しただと。
くそぅ。
なら背中か。
再生しただと。
くそぅ。
次は頭部と背中を中心に抉りだしてみた。

「なんでつむじなんだよぉぉ!!!!!!!!!!」

わかればこちらの物だ。

つむじを抉る攻撃を続け、当たりに巨人の死体しかなくなった頃また新たな足音が聞こえる。
このままでは流石に何時か喰われる。
そう悟った四月一日は遙か彼方に見える森を目指すことにした。
巨人に突撃していく形になるが仕方ない。

「殲滅ゥゥゥ!ヒーハー!」

軽くサバイバルだが問題ない。
何故なら四月一日は不死身の四月一日だからだ。

「ウォォォォォォ!!!!!」

無駄に叫びながら走り、斬り、殴る蹴るを繰り返すと何時の間にか森じゃないか。
とうとう人智越えたかと自惚れながら見たこともない巨木が立ち並ぶ森の中でその枝をうまく使いながら巨人第三派の襲撃を凌いだ。
改めてみると巨木。巨木。

まさか巨人何じゃなくてコッチが小人になった訳じゃあるまいな、とあたりを見渡すと森には四月一日と同じサイズの人の手が入った後、つまり道らしきものがある。

「何があったんだ、こりゃぁ」

その手が入った後というのもだいぶ長い間放置されたようで荒れ果てていた。

義肢は滑らかな肌触りをしているがその硬度は波の金属以上である。
その腕と足を木に刺すように引っ掛けながら木を上る。

木の上で野宿だな、と独り言。
なんだか此処にきてから独り言が多い気がする。
20mほどの所でまず動く物に反応する赤外線センサーを取り付ける。
そのまま上に上に登り、本日の宿を見つけた。
ランプで灯りを確保して残弾の数を確認する。
といっても実弾を撃ち出す銃は少なく、大体は光エネルギーを転換したビーム銃なのだが。

夜の帳が落ちる頃、昼間騒がしかった巨人達は静かになり夜は行動しないようだとまたコンタクトレンズに記録した。
本当にここは何処なんだと疑問を抱きながら眠りについた。




本編が面白くなくなってきたので気分転換してみることにする(°З°)

巨人いいね。巨人。
夢小説書きたかったんだけどあれですわ、名前変換入れんの面倒だった。
自己満甚だしい。

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