ふと、入り口に気配を感じた。筆を置いてため息をつきながらそちらを見れば、ちらりと見える見慣れた帯。




「なまえ」

「・・・・・・・」



呼べば顔を俯かせながら姿を現すなまえに法正は溜息をつきながら椅子から立ち上がって手招きをした。途端に追突するなまえ。きつく腰に回った腕に少し呻きながら抱き返せば、腹にごしごしと顔面を摺り寄せてくる。



「何があったか、言わないとわかりませんよ」

「・・・・ちょーひの馬鹿にガキって言われた」

「それはまた、」



それなりに、年を食っているはずのなまえの容姿はここ10年ほど変わっていない。許嫁として紹介されて以来一応共同生活を続けてはいるのだが、自分だけ年を取っている感じが否めない、というのは法正が常々思っていたことだ。



「やだ、もー・・・・背伸びないしおっぱい小っちゃいし・・・・」

「いつか周りの女も貴方に追いつきますよ、先を行ってるだけです」

「それ私がお婆ちゃん体型って言いたいの」

「くくっ、さぁ? 俺には何とも」



黙るなまえの頭を叩くように撫でれば、ぶすくれたなまえの声が腹に響く。








「・・・子ども扱いしないで」

「・・・・・・」




煽られている。そう思ってはいけないと分かっているしそう何度も自分に言い聞かせているのだが、それでも出そうになる手を法正は必死に抑えていた。
今出したら関係改善の余地もないほどに逃げられる。できればこの娘が”生涯の唯一”であってほしいというのが法正の望みだ。









そのためなら自分の醜く下種じみた劣情なんぞ易々と踏みにじってやる。








「・・・・こーちょく・・・その、さ、私・・・・」




やめろ、言うな、その先だけは止めてくれ、さっきまでの決心が法正の中でいとも容易く一斉に決壊を宣言しだした。


するりと腕を離して、赤らんだ顔をゆっくりと自分に向けるなまえに法正は年甲斐もなく生唾を飲んだ。泣いたのか潤んだ目と艶めいた唇に、どうしても目が行ってしまう。




「私・・・ね? その・・・・」

「・・・・・寝ましょう、明日も早いのでは?」

「っ孝直!」




離れようとした瞬間に襟元を掴まれて、きつく結ばれた目が間近に見えた。同じくらいきつく結ばれた唇が自分にあたって、その柔らかな感触に、果実か何かで出来ているようなその甘さに、法正は思考を一瞬止める。








それがいけなかった。






先ほどまで必死に自分の様々を押し止めていた理性を本能が蹴り倒して、いっそ目の前の子兎を味わってしまえと唆してきたのだ。理性を呼び戻して大乱闘を開始する脳内。



なかなか離れない唇と、服から伝う震えが決定打だった。






「ん・・・っ、む、う・・・!?」





無理矢理になまえの唇をこじ開けて舌に吸い付く。一瞬だけ外して息をして、また吸い付けば見開かれた目が微かに視界に入った。


男というものをまるで理解してくれない、自分がどれだけ人の心を鷲掴みにできるかをまるで分っていないこの娘をどうしてやろうか。離れようともがくなまえを壁に押さえつけさらに深く口づけて、自由な手でなまえの帯を解いていく。
包み込めるほどの小ささの胸を手探りで優しく揉めばくぐもった声に艶が増し、強く掴めば悲鳴のような声がして、穏やかとは口が裂けても言えない自分の加虐思考に火をつけた。




「・・っふ、ぁ・・・っあ、あ、や、やだ・・・っ」

「・・・・・・・・」




肩を晒され、呼吸を奪われ、崩れ落ちるなまえと一緒に床に座り込んだ。
雪のように白い胸元に吸い付いて内出血を起こさせる度に上がる悲鳴に、もう一度、もう一度と数を増やしていく。

お前が望んだことだ、本望じゃないか、悪党の名乗りに相応しい声が頭の中で反響した。







それを、恐怖しか訴えてこないなまえの目と、震えながらも法正の服をつかむ手が止めた。






「・・・っこうちょ、く・・・っ」




震えながら、息を荒げながら涙を流して名前を呼ぶなまえに、一時的に離していた手を伸ばす。びくりと跳ねる肩。





















「・・・・・・・・・



風邪をひくぞ」



ゆっくりと、意志と逆方向に動こうとする腕をみっともなくガタガタと震わせながら動かしていく。
乱れた服の合わせ目を正し、解けた帯を適当に結んで、ボロボロと零れていく涙を拭いて、未だに震えるなまえの肩に両手を置いた。お互いに震えているのが情けなくて自嘲する。




「俺が悪かった。もうしない。お前の準備ができるまで、待ってやるから、もう泣くな」



半ば自分に言い聞かせるようにゆっくりと、途切れ途切れに言葉を紡いでいく。一瞬止まったかと思った涙が量を増して流れてきたので、法正はギョッとしながらもそれを拭き続けた。



「ごめんなさいぃぃ!!!」

「分かったから黙れ」





いつだって君のためにすべては動く




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似非や・・・似非法正やでぇ・・・
はい、なんか、誰おま感が否めませんがいかがでしたでしょうか?
悪役に回るの好きそうですよねあの男、必要悪と呼んで法正と読むみたいな。

リクエストありがとうございました!!!