届かない恋愛なんざすべきではない。近頃そう考えるようになった。
何が悲しくて自由を愛するあの人がジャラジャラと重苦しい鎖のような愛なんぞ受け入れてくれるのだろうか。いや、渡すべきですらない。
「ん、なんかあったかなまえ」
「何でもないっすよアニキ」
「お前ぇにそう呼ばれるのも、なんつーか、擽ってぇなぁ」
首筋を掻いて目をそらして、照れくさそうに笑うこの人の心はいつだってこの大海原と可愛い可愛い野郎共かっこ私含むかっことじに向いている。あぁ、もう、もどかしい。
「どうしたんすかアニキ照れてんすかアニキヘイヘイアニキ!」
「だぁぁくそ連呼すんな!」
かわいいっすよアニキ! はさすがに言わないでおこう。こっちはこの人に良く思われたいのだ。よく懐く犬か猫くらいの位置がいい。どうにかなろうなんて、思わない。嘘だ。
のどに小骨でも刺さったような違和感。ああもう、いらないなぁ、消えてくれないかなぁ、邪魔なんだよ。捨てようにもびったりくっついて離れてくれない。
「大好きっすよアニキ」
「いじってんだろお前」
伝えたら楽になるとか、どこの妄言だ。ほら、さらっと、流して、弓矢でもぶっ刺さったような痛みを与えてくる。増える一方なんだ。ああ痛い。
この気持ちは、いらない、でも、この人の気持ちの一片でも貰えたら、たぶん私は何もいらないだろう
望めば全てが終わる恋
いっそ海に沈んだら、このいらないものは離れてくれるだろうか