Nothing`s gonna change





硝子玉は、フィルターのような武器だと、いつだか聞きました。




「3つは攻撃に、もう3つは守衛にまわってください」

「もーちょっと格好いい言い方しましょうよう...三守三攻!! とか、唐鋤(カラスキ)の盾!! とか」

「流石に恥ずかしいです」



玉の量は攻撃力と防御力に直結しているのだと分かったのは最近の事で、6つ一度に守衛に回すと大体の攻撃は防ぐことができます。まぁ、私が衝撃で吹っ飛ばされたら終わりですが。
そして6つを攻撃に回せば防御が一切できない代わりに攻撃力がマックスになる。そんなところですがこの状態で一撃でも食らったらアウトです。死んじゃいます。



「あれ、昔これ打撃武器じゃないとか言ってませんでした?」

「うふふーよくぞ聞いてくださいましたー! その玉の一つ一つは簡単に申しますと衝撃波発生器に過ぎません。それ故玉自体にはなんの防御力もありませんので地面に叩きつけただけでおじゃんです





空間的・言語的・物質的事象を否定する力をその一つ一つが持っているとお考えくださいませ! すなわち! どこぞのオレンジだか茶色だか分からない髪の毛のヘアピンが武器の巨乳JKのように物質の連結やら時間の干渉やらを拒絶することはできませんがこちらはそのエリアに! 特定したものをが! 侵入するのを否定することができるのですよ!! まるでコーヒーをドリップで淹れるとき豆かすとしか言いようのないあの黒いやつがコーヒーかっこ液体かっこ閉じの中にフィルターにさえぎられて一切入らないように!! まぁどちらかと言うと触った瞬間細切れにされるシュレッダーの刃のようなものですがね!!」

「今日テンション高いですね」

「聞きたくない言葉がそこらかしこから聞こえるんで、耳栓替わりでごさいますです...ぶっちゃけナイトメアとかどうでもいい」

「本末転倒!」

「だって咲月様の人生そのもの私が一切手を加えなくとも完全にナイトメアなんですよ!? どうあがいても絶望ですよ? 一体ワタクシにどうしろと!!
と、いう事でまぁあとはご自分でいかように発展させてくださいませ、ちなみに言いますとその武器は派生ゲームから言いますと凍牙属性で御座います、元の、咲月様自身の属性が氷タイプとでも言いましょうか」



納得、末端どころか全体的に冷え性なので、今が秋も終わるころで、そろそろ私が完全に氷人間になる頃ですね。氷人間と言うのは、その...兄様方から頂いたあだ名です。




「もう、5年経つんですねぇ」

「天国での安穏としたぬるま湯のような生活、ほしいです?」

「魅力的ですけど、まだ死ぬわけにはいかないので、」

「........



まだまだ、ですねぇ...」

「? 何かおっしゃいました?」

「おおっとここで乙ゲー主人公の鉄板スペックを発揮ますか! 悦いぞ悦いぞでございます!!」






歯切れの悪い、そんな時間です。一通り玉をぐるぐる回して、屋内に戻れば夏侯惇様の後ろ姿。屋敷の守衛のボスとして留守を任されただけあって、仕事もいろいろ忙しいようです。ここは邪魔せず、そーっと...



「ひくしっ」

「ん?」

「あ、」



最悪のタイミングでの、まさかのクシャミ。ただの空耳と片づけてしまおうと思って壁の凹みに逃げますがばれたようです。



「兇手の真似事か?」

「あ、いえ、その、お忙しそうですし、邪魔してはと思って」

「....



今暇か」

「はい、一応、お昼までお休みをいただいています」

「そうか、算術は得意か」



この時代の算術、もとい算数ですが、まだ色々伝わったりしてない所為か、高校数学よりも少しですがまだ分かりやすい域です。コクリと頷けば、少し疲れたような顔に手を当てながら、少し申し訳なさそうに口を開く夏侯惇様。



「少し手を貸せ」

「はい、承知しました」



言葉のすぐ後、降ってくる大きな、肉刺とささくれの多い手。く、首がもげる



「...すまんな」

「? いえ」




Nothing`s gonna change


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