すきです。

中学の時にちょっとしたきっかけでよく話すようになった私と松岡くん。高校も一緒になって、クラスも一緒になって。いつの間にか、私は松岡くんを好きになっていた。

「天草さん、課題のここ、出来ましたか?」

「んー?
げ、数学を私に聞くの?ちょ、ちょっと待って。出来たやつか確かめるからっ」

パラパラとノートを捲れば、松岡くんはすみません。と眉を下げる。こんなことだけれど、私を頼って来てくれたと思うとどうしようもなく嬉しくなる。好きな相手となると、ほんのちょっとの些細な会話でも嬉しいと思ってしまうよね。しばらくそのことが頭をいっぱいにしてしまって、他のことに集中できなかったり。なんて、前友達に言ったら「ウブだね」って笑われてしまった。仕方ないじゃないか。初恋なんだもの。
なんとか解けた問題だったようで、私は松岡くんの方に身を乗り出した。昨日頑張っておいてよかった。

「で、この公式を使ったら出来るでしょ?」

「あぁ!
わかりました!
ありがとうございます天草さ……」

説明を終えて顔を上げたその時、松岡くんもちょうど顔を上げたところだった。バッチリと目が合う。カッと頬が熱くなった。今までにないほど至近距離だったから。あまりのことにすぐ反応することが出来なくて、私はしばらくそのまま動けなかった。
でもいつまでもこんなことをしてしまったら私の命がもたない。ハッとして松岡くんから離れた。

「あ、えと……他に何かあった?」

「い、いえ、大丈夫ですっ」

バクバクと心臓が高鳴る。
冷え性である手で頬に触れると、思わず一度手を離してしまうほど熱かった。
バレてしまっただろうか。こんな態度、意識していると言っているようなものになってしまいそうだけれど。チラと松岡くんの顔を見てみる。疑われていたらどうしよう。そう思ったのだが、松岡くんはそんな顔は全くしていなかった。松岡くんの顔も、真っ赤に染まっていたのだ。

「……」

もしかして、松岡くんも私を意識してくれてたりして。そう考えて、すぐに頭を振った。違ったら悲しいもの。そんな考えはしないでおこう。
松岡くんはもう聞きたい問題はないと言うのに私の机から動かなかった。どうしたのだろうか。「松岡くん?」と呼び掛ければ、松岡くんはぶつぶつと何かを呟いた後、何かを決心したように私を見た。いつものにこにこした松岡くんじゃなくて、少しギクリとする。

「どうしたの?」

「お話があります。」

そう言った松岡くんは私の手を引いて教室を出た。私は引っ張られるがまま松岡くんについていく。松岡くんに握られた部分は本当に熱くて、松岡くんの手も、熱かった。

「あの、僕……」

連れてこられたのは校舎裏。人は誰もいなくて、しんとしている。
私の頭は混乱していた。松岡くんはどうしてこんなことをするのだろう。私はどうすればいいのだろう。ドクンドクンと心臓が音をたてていて、松岡くんに聞こえてしまうんじゃないかと心配になった。

「僕、っ、天草さんのことが……」

顔を真っ赤にした松岡くんは、何かを口にした。その内容はすごく恥ずかしくて、すごく、嬉しいこと。
私たちはゆでダコのように顔を赤くしてフイと目をそらした。でも、喜んでいる場合じゃない。まだ返事をしていないのだから。

「わ、私も……」

好きです。

松岡くんの顔が、パァッと明るくなった。
その瞬間、影に隠れていたのだろう松岡くんの幼なじみの皆がばっと表れた。その中には私の友達もいて、少し照れ臭かったけれど、「よかったね」と言ってくれて、私は笑って頷いた。




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初々しい話が書きたかったんですが、こんなことに……




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