※診断メーカー【幸せそうな2人が見たい】より
己よりもずっと小柄な堀に肩を抱かれながら、彼の意を決した告白に野崎は瞠目した。普段はどんな状況化にあろうと凛としている堀の声が震えていたのは、冬の海辺の寒さからか、はたまた言葉の重み故か。
野崎が知る限り、堀は軽々しく口約束をするようなタイプではない。そんな彼が己に向かってこう言ったのだ。
―一生かけて幸せにする、と。
「あー…だからその、俺はこの先進学しても就職してもお前と一緒にいるつもりだし、アシを辞める気もねぇし、当然、お前と別れる気もねぇから…一生俺と一緒にいて欲しいっつーか…あーくそ、まとまらねぇ…」
震える声音を誤魔化すように、ガシガシと頭を掻きながら言葉を紡ぐ堀。そんな堀を見つめていた野崎の視界が、ふいにジワリと滲んだ。瞳の表層の涙液がゆらりと揺らいで、堀の顔がぼやけていく。
「……ッ」
野崎が小さくしゃくり上げると、堀がこちらを振り向いた。己が涙していることに驚いている様子の彼に、
「…ありがとうございます、先輩」
一生なんてかけなくても、もう充分に幸せです、と。野崎はハラリと涙を零しながらはにかんだ。
暫しの間を置いて、堀が野崎の涙を指の先で拭う。先程よりも明瞭になった視界には、眉間に皺を寄せて不満そうな、しかしどこか嬉しそうな、複雑な表情の堀が居た。
「…ばぁか。一生じゃねぇと足りねぇよ」
そう言って、堀は野崎の首に腕を回し、短い黒髪を無遠慮な力で抱き寄せた。野崎の頬に当たるダウンコートの生地は、暫く潮風に晒されたおかげで随分と冷たくなっている。そろそろ帰りましょうと促さねば、堀が風邪を引いてしまうかもしれない。だから。
―あと、ほんの少しだけ。
最愛の人からの抱擁に、野崎は瞼を伏せて身を委ねた。