嵐の後の残暑






気がついたら茹だるような暑さの季節が終わりを告げていた。
思えば、猛威を振るったあの台風が通り過ぎてから肌寒くなった気がする。
ついでに激しい嵐のせいで、血で血を洗うこの時代には珍しく、全ての争いが鎮静化し、一時の平和までもたらした。

周りを見れば、急な温度の変わりように不平をこぼす者がいたり、過度な反応をして、寒すぎて死ぬなどと言葉を発する輩までいた。

嵐が起きたからこそ訪れたこの清々しい晴天にも、最早寒い事で頭がいっぱいなのか、誰一人感謝する者はいなかった。



「おかしなものだ…オレには過ごしやすい季節なのに」

「ほう、お主は寒いのが好きなのか」

「………」


誰に言ったでもなく、ただ何となく独り言で呟いたら、驚くことに返事が返ってきた。
飛び上がりそうになった身体を押さえ、声の方に振り向いてみれば、オレにとっては不快…というより今は恐怖にしか感じない笑顔の男がそこにいた。

おかしいな。ここはうちはの屋敷でオレの部屋なのに、何故招いてもいない奴がオレの隣にいるんだ。


「何故貴様がここにいる…柱間…」

「うむ、お主に会いたいと思ってな。一応言っておくが、奇襲やら偵察などではないからな」

「……そうか」


何故だろう。
今オレは凄まじい疲労感に襲われている。
最早怒る気すらも起きない。コイツを相手にするのが至極億劫なのだ。

何時ものオレなら素早く声を荒げて、この男、柱間に噛みついているのだが、今日は気候がオレにとっては最適だからか、穏やかに過ごしたい気持ちが強い。
故に適当に波風を立てないよう、返事をしてしまった。

それをどう勘違いしたかは知らないが、柱間が更に満面の笑みで近づいて来た。
とりあえず、コイツが盛大に勘違いしていることは分かる。


「今日はデレ日かマダラ!」

「…なんだデレ日って」

「そうかそうか…ふふ」

「……もういい」


実に面倒くさいので適当に流して、オレは視界から柱間を消すことにした。
そうだ、今日は穏やかに過ごすんだ。オレは心地よい秋を感じながら知的に優雅に今日を過ごすと決めたんだ。
頭領たる美麗な品格を滲み出して、柱間みたいに憧憬の対象となる男になると誓っ……いや違う、柱間じゃない。断じてオレの中に柱間への憧憬の念があるなんて認めない。
そうだ、憧れてるのは扉間だった。ああそうだ、扉間だ扉間。違うなんて、認めない。
こんな堂々と不法侵入する気持ち悪い男に憧れるなんて、生まれてこの方一度もない。一度もないはずだ。

そんな事を思いながら、ちらりと柱間を見れば、相も変わらない笑顔でオレを眺めている。


「……」

「……」

「……本当に何しに来たんだ…貴様は」

「先も言った通り、お主に会いたかったから来たのだ」

「それは聞いた」

「そうだな」

「………」


その後の言葉を期待して待ってみたが、どうやら奴はそれしか言う気がないらしい。再び口を閉ざし、にこにこと笑っているだけだった。



それからどれくらい経ったのだろう。
柱間の視線を感じながらも、なんとか読み物に徹していたのだが、居心地がいいはずがない。
もうそろそろ、諦めて怒鳴ろうかと思った時だった。不意に柱間が立ち上がったのだ。


「…では帰るとするか」

「!…ようやく帰るのか、早く帰れ」

「はは、まあそう言うな…邪魔をして悪かった」


そう言って苦笑しながら謝ると、「だが満足した」とにこりと柱間は微笑んだ。

何が「満足した」だ。ふざけるな。
こっちは素晴らしく充実した一日を送る予定だったのに。この男のせいで台無しだ。

苛立ちが募り、近くに合った陣扇で思い切り殴ってやろうと、振り上げながら立ち上がったら、そのまま抱きしめられ、た…?


「っ!?」

「ふふ…仕上げだ…」

「っ!…!!?」


突然の出来事に驚愕し過ぎて声が出ない。
せめてもの抵抗と身体を捻ってみたものの、男の強靭な腕力の前では意味を成さなかった。

真っ白になった脳を正そうと深く息を吸い込んだら、実に残念なことに、柱間の匂いが肺を満たした。
おかげで更に落ち着かない。この状況が、この抱きしめられていることが現実なんだと嫌でも理解せざるおえない。


「は…っ、離、せ…っ」

「もう少し」

「なっ、ふざけ…!!はしら、ま!」

「マダラ…」


上手く暴れる事も出来ずにひたすら身体を捻っていたら、突然名前を呼ばれた。…と思ったらそのまま耳に息を吹き込むように、低い声が響いた。


「…またな、マダラ…」

「ひぁ…っ」


驚きとくすぐったさで思わず変な声が漏れてしまった。
柱間はと言うと、すでに瞬身の術でいなくなっていた。要はいい逃げされたわけだが、正直そんなことに構っていられる余裕はない。

身体から一気に力が抜けると、膝から床に崩れ落ちて倒れた。
同時に、右手に持っていた陣扇が派手な音をたてて床に落ちた。
その音を聞いてか、遠くでオレを呼ぶイズナの声が聞こえる。

オレは、忙しなく打つ鼓動と心配そうに向かってくるイズナの足音を聞きながら、火照った身体で息を吐くように小さく言葉をこぼした。





「まだ秋は遠いな…」








〜嵐の後の残暑〜





「兄さんどうしたの?すごい音がしたけど…」

「イズナ…残暑見舞い…申し上げ、る…うっ…」

「え、もう秋だよ兄さ…って、大丈夫!?」





※※※※※※※※※※※※

おかしい…ネタを盛り込めず脱線してしまった。
しょうがないから終わりに行き着くまで適当に書いたが、これは…ww

内容然り、いろいろ迷子になりましたorz
すみません、これマダラさんと柱間様です。
キャラが本当に迷子で泣いた。

マダラさんの赤面は可愛いと思(ry





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