何とかしてキミと






カランと、涼やかな音を立てたグラスの氷。
それと同じ様な音を立てて、ドアのベルが鳴り銀の髪の男が店に入ってきた。


「…珍しいな…お前がここにいるのは…」


入ってきた男はそう口にしながら、少しだけ目を見開いて、珍しそうにこちらを見た。


「…でしょ」

「なんだ、何かあったのか?キャロット…」

「別にー、休憩がてらここで飲んでるだけだよ」


ごくごくとグラスの中の物を飲みながら、隣に座ったジンの質問に答える。
するとバーテンがジンに何を飲むか聞いていて、こいつと同じのをとか言ってるのが聞こえた。


「やめなよ。マスター困ってんじゃん」

「あ?同じの頼んだだけだろ」

「これは野菜ジュースだから」

「…は?」


素っ頓狂な声を出したジンが私のグラスを奪うと、迷うことなく一口飲んだ。


「うわぁ…ガチで野菜ジュースじゃねぇかこの女。何が、野菜ジュースだから、だよ。何ドヤ顔で言ってんだこいつ。てめぇの方がよっぽどバーテンに迷惑掛けてんだろうが馬鹿なのお前?馬鹿だなキャロット」

「おいジンてめぇ!好き放題言いやがってこんちくしょう!健康にいいんだよ!」

「いやお前馬鹿だろキャロット。そう言う問題じゃねぇよ」

「うっさいな〜!お前も飲めよ野菜ジュース!ほらやるよ!ほら!」


グイグイとジンの頬に野菜ジュースのペットボトルを押し付ける。


「おいやめろてめぇ、グイグイすんな痛ぇ」

「ざまぁ!あ、もうこんな時間!休憩終了だわ。じゃあねジンちゃん、バイバイ!」

「ああ…」


ーーー…
ーーーーー…


ガチャリと突然ドアが開く音が響けば、銀の髪の男が入ってきた。


「…珍しいな…こんな所でお前に会うとは…」

「いやお前デジャヴかよ!」

「あ?さっきのはバーだろ。ここは組織の資料室だから微妙に違っ…こいつ…また野菜ジュース飲んでやがる…」


私の目の前には野菜ジュースの入ったグラスが置いてある。
それをブルブル震えながら指を指すジン。


「うっさいなー!お前も飲めよ野菜ジュース!ほらやるよ!ほら!」

「お前こそデジャヴすんじゃねぇ」


そう言いながらジンは資料を持って来て、私の隣に座った。
机には分厚いファイルが二、三冊積み上がっている。


「…あ!もうこんな時間…!私行かなくちゃ、じゃあね!」

「もう行くのか…早ぇな」

「ジンちゃんよりだいぶ前からここに居たからね。お仕事頑張って!」

「ああ…お前もな…」


ーーー…
ーーーーー…


いらっしゃいませ、と言う店員達の声と共に、銀の髪の男が入ってきた。


「…珍しいな…お前が…」

「おいやめろや!もうお前ホント!なんだお前!」


再び登場して来たジンに、声を上げる。
その間にも、さも当然と言う様に私の向かい側に座るジン。


「冷てぇな。何回顔を合わせようが問題はないだろうが」

「いやいやおかしいでしょ。ジンちゃん出て来すぎだから」


私のツッコミは軽く聞き流された。
しかもいつの間に呼んでいたのか、やって来た店員に食事を頼むしまつ。


「キャロット、今回はまだてめぇも来たばかりの様だな」

「うん、まぁそうなんだけど…ジンちゃんって、恐ろしくファミレス似合わないね」


不自然すぎるわ、と私が言うと、うん?とか言いながらコップに入ってる水を飲みながらこちらを見た。


「…ならオレには何が似合うと思う」

「うーんレストランとか?」

「はっ…それなら次はそっちに行くか…」


そう言ってる間に出来上がった食事が運ばれて来て、私も彼もそれぞれ手をつけ始めた。

しかしやはり、彼はこの場からかなり浮いている。
なんとなく違和感のある光景から目を離せないでいると、突然ジンは席を離れ、まさかのドリンクバーに向かって行った。
余りにもそれが衝撃的過ぎて笑いそうになったが、持って来た物を見て完全に吹いた。


「…なんだ」

「野菜ジュース持って来たの?」

「ああ、お前の好きな野菜ジュースだ。…健康にいいんだろ?」


独特な笑みを含んだ声で言いながら、野菜ジュースの入った二つのコップを机に置いた。


「ありがとう」

「ああ…。それで、次の事だが」

「次?」


何のことを言ってるのか分からなかったから聞き返したら、(すごく嬉しそうに見える)ニヤついた顔でこんな事を言われた。


「二人でレストランだろ?お前は何が食いたい。予定、空けておけよ」

「なんだって!?」




〜何とかしてキミと〜



一緒に居たい。





*********

ジン→→→→←貴女。
これが今一番熱い…!
主人公とジンは同期設定。
ジンちゃんに唯一パンチとかチョップとかお尻を叩いたり出来るそんな関係。






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