「おい、キャロット」 組織の廊下を歩いていると、突然名前を呼ばれた。 振り向けば、いつもの見慣れた光景。 「また貴方なの…」 毎日見るこの男。 毎日見る真っ赤な薔薇の花束。 つい呆れた声が出てしまう。 「貴方、私の部屋を薔薇で埋め尽くすつもり?いい加減、この香りで意識を失いそうなんだけど」 「はっ、好きな女には燃える様な真っ赤な薔薇の花束って言うだろ?受け取れ」 またこれ… この人、ホント現代人なの。 今時赤い薔薇の花束を律儀に持ってくる男なんていないでしょ。 「大体、てめぇがいつまでもオレのところへ来ねぇ所為でこうなってるんだろ」 「なんで貴方の所へ行かないとならないのよ」 「あ?」 「他の子にでもあげなさいよ。喜ぶわよ、絶対」 そもそも私に贈る事が既に間違ってる。 いつ誰が、私がジンに対して恋愛感情を持ち合わせてるなんて言ったのか。 いつどうして、彼が私に恋愛感情を持ち合わせてる事になったのか。 「他の女なんざ知らねぇよ…手に入れるのはキャロット、お前だけでいい…」 「それは残念。私今彼氏募集してないの、わかった?」 なかなか諦めないこの男を、バッサリ切ってやる。 毎度キザな言い回しと振る舞いをして、されてる私が恥ずかしくて身悶えているのを、嬉しがってると勘違いしたのかも知れない。 だからこうやって、毎度毎度簡単に抱ける女だと思って言い寄ってくるんだ。 そうに違いない。 「クク…そんなに赤く染まった顔で言われてもなァ…本当に可愛い女だなてめぇは」 「これは貴方の所為よ、ジン…!」 「そうだろうよ…」 ニヤニヤしながら近づいて来たジンに、私は薔薇の花束を押し付けられながら、頬を撫でられた。 「ちょっと…!やめて、触らないで…!」 「キャロット…」 「や、やめてって言って…ひゃ!」 最後の言葉は突然襲って来た首筋の違和感でかき消される。 (この男!勝手にキスマークなんて付けて!) 何てことするのかって、不満を言おうとしたら、耳元で声を吹き込まれた。 それもかなり笑みを含んだ、艶のある声で。 「どう足掻こうと、てめぇはオレが決めた女だからな…逃がさねぇぜ?キャロット…」 「…!」 〜恋人推薦枠〜 なってたまるかキザ男! と、心中豪語していた三日前の私。 今では仲良く彼とベッドの中。 *後書き 初ジンちゃん夢。 リハビリ兼ねて無心で書き上げたので内容が無いよう…あっ…! |